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時空と宇宙論のページです
世界は何でできているのだろう
 素数と同時に関心を持っているのが、この世界が何でできているのか、どのようにしてできたのか、こうしたことに関する分野です。素粒子とかビッグバンと言うような世界に深い興味を持っています。

 最近の研究では学生時代に習ったことがどんどん覆されており、昔の教育で身につけた知識ではとても世界を理解できません。これも数学と同様、難しいことは分からないまま、ちょっとは科学の進歩についていこうと本を読んでいるだけで、分からないことだらけです。でも分からないと言うことが分かるだけでも、結構楽しいものです。

 少しだけ、個人的な興味におつきあい下さい。なお、1番下に宇宙に関するリサ・ランドールさんなどの動画があります。
時空とは何か
 20世紀最大の科学者と呼んでも言いと思いますが、アインシュタインが遺した最も重要な成果は、 @ 観測者に対して光が一定の速度を有することを解き明かしたことと、 A 重力が時空の歪みに由来することを発見したこと、この二つだと思います。

 @は普遍的な時間がないこと、つまり人(動いているかどうか)によって時間の進み方が違うと言うことを表していますし、動く方向に長さも縮むことを示しています。

 Aは地球と人が引っ張り合っているのではなく、地球と人がその質量によって時空を歪め、その歪みの方向に引力を感じている、と言うことです。よく使われるたとえが、トランポリンです。ボーリングのボールを置くと大きくくぼみますが、その近くに小さなボールを置くと、それ自身も小さなくぼみを作りながら、大きなくぼみに向かって落ち込んでいきます。これが私たちに感じられる重力なのです。

 @とAを通じて、物理学者は時間と空間が分かちがたく結びついており、私たちは時間と空間の中を移動しているのだと理解しています。そこで時間と空間を分けずに、「時空」という概念を使っています。従って、私たちの住む世界は空間3次元、時間1次元、計4次元の世界です。
宇宙を理解する二つの方向
 宇宙というか、この世界の根本的構造を究明する研究には二つの方向があります。

 ひとつはマクロの方向、百数十億光年という単位の大きさの方向と、ミクロの方向、10のマイナス33乗センチメートル(1センチメートルの10億分の1の10億分の1の10億分の1の100万分の1)という途方もない小さな方向の二つです。

 これまで主にマクロの方向を探索してきたのが宇宙論で、その理論的支柱はアインシュタインの一般相対性理論です。ミクロの方向を探索してきたのは素粒子論で、理論的支柱は量子力学です。

 しかし大きさの違う現象に対して二つの理論があること自体は、本来、統一されるべき理論のそれぞれが一側面ではないかと考えられるのです。

 たとえば、ブラックホールの中心では、莫大な質量が極めて小さな領域に押しつぶされていて、それを明らかにしようとすると、一般相対性理論と量子力学を同時に適用すると無意味な解しか出てきません。つまり、両方とも不完全だと言うことです。

 重力の理解を劇的に変えた、言い換えれば時空の構造を劇的に変えたアインシュタインの一般相対性理論は1915年に発表されました。その後、星の観測で理論が実証され、一躍アインシュタインはスーパースターになりました。1922年には日本にも来て、43日間滞在し、国民に熱狂的に迎えられました。

 従って、新たな重力の理解は、日本でも80年以上前にできていたはずです。しかし、学生時代に一般相対性理論に基づく重力の説明を受けた覚えがありません。質量のある物質同士は距離の逆2乗則に応じて互いに引き合う、というニュートン式の説明しか受けていません。その当時完全に時代遅れ(ただし日常生活レベルでは支障はない)の理論を教わっていたのです。

 今、教室でどのような説明をしているか知りませんが、すでに一般相対性理論も量子力学ももっと深いレベルの理解が必要だと言うことが分かっています。ビッグバンのインフレーション理論、ひも理論、超ひも理論、超対称性、カラビ・ヤウ空間、余剰次元理論などなど、宇宙についての理解はどんどん進んでいます。

参考――超ひも理論@超ひも理論A超ひも理論B
ひも理論から超ひも理論へ
 昔はこれ以上分割できない粒子が原子だと考えられていました。しかし、それでは理解できない現象が発見され、素粒子という考え方が出てきました。ところが実験が進むに連れて、素粒子がどんどん発見され、数え方によっては3ダースを超えるような状況になっています。果たしてこれで「素」粒子と言えるでしょうか。

 素粒子が三つの族に分かれているのは何故か、素粒子の質量がそれぞれに大きく違うのは何故か、こういう疑問もあります。

 また、世界の基本的な力として、重力・電磁気力・強い力(陽子と中性子を原子核に閉じこめる力)・弱い力(放射性崩壊を起こす力)があります。すべての相互作用はこの四つの力の組み合わせなのですが、何故3や5でなく4なのかが分かっていませんし、それぞれの力の強さが桁違いに違いすぎるのは何故か、これも分かっていません。

 こうした問題を解決するために、高出力の実験装置をどんどん大型化し、宇宙誕生時には四つの力が同じだった、一つだったという大統一理論が出てきました。しかし、電磁気力と強い力、弱い力の統一はできたようですが、どうしても重力を組み込むことができませんでした。

 このような状況で生まれてきたのが、「ひも理論」です

 単純に言うと、物質は点粒子でできているのではなく、「ひも」でできているというものです。ひもの振動によって様々な素粒子が生まれるというのがひも理論です。そしてひも理論は、力の統一をするためには10次元の「時空」が必要だと主張します(一説には26次元とも言います)。ところがひも理論はその後、M理論に発展します。その中で時空は11次元であると修正されました。

 極めて簡単に書きましたが、もう少し正確に書くと、「低エネルギーでは10次元超ひも理論と11次元超重力理論は実質的に同じ、双対性がある」と言うことで、宇宙は10次元でもあり、11次元でもある、ということになります。

 M理論の11次元から次元をひとつ減らすには5種類の方法があります。そして5つの方法から5通りの10次元超ひも理論が導かれます。と言うことは、やはり11次元の考え方が正しいのかも知れません。

 なおM理論は、「ひも」ではなく、「膜(メンブレーン)」を基本とする考え方です。膜の振動数が素粒子の性質を決めるというわけです。
未完成だが有力なM理論
 私たちが認識できる次元は四つです。縦・横・高さの3次元と時間の1次元です。世界が10次元なら、あとの6次元はどこへ行ったのでしょうか。

 これも説明と理解が難しいので結論的に言うと、カラビ・ヤウ多様体として巻き上げられて(コンパクト化されて)いるのです。カラビ・ヤウ多様体は6次元なので想像することもできませんので、ネット上で適切な説明がないか探したのですが、これというものがありませんでした。いずれもあっさりし過ぎているか、難しい論文だったりで紹介することができません。

 ロープを遠くから眺めると、1次元の線に見え、長さ以外の2次元は見えなくなります。同じようにプランク長さ以下にコンパクト化されている6次元は私たちには見えません。しかし、見えない6次元を導入することで、世界の基本的な四つの力が統一できるのです。

 ただし、M理論は完成していません。宇宙誕生時には平等だった次元の内、私たちに認識できる空間3次元だけが広がった理由が分かっていません。そして何より、理論を支える数学が未完成で方程式がなく、近似式しか分かっていません。従って「解」が無数にあり、私たちの「この宇宙」を説明することができないのです。

 とは言ってもM理論は世界を理解するための有力な理論です。

 @M理論は重力と量子力学をともに取り込むことができる Aスピンの概念、素粒子の族構造、メッセンジャー粒子、ゲージ対称性、等価原理、対称性の破れ、超対称性などなどの重要な概念が自然に説明できる B「標準理論」には実験に合わせられる調整可能なパラメーターが19個もあるが、M理論には調整できるパラメーターはない、など従来の理論より優れた内容を持っています

 2008年9月に大型ハドロン衝突型加速器(ジュネーブ)がついに稼働しました。これによってM理論が予測している粒子が見つかれば、理論は一層有力になるでしょうから、今後10年以内には一定の証拠が見つかるのではと期待されています。
超ひも理論からブレーンワールドへ
 ひも理論が紆余曲折を経て超ひも理論になり、そこからM理論が生まれ、さらに現在では、M理論の中心であるブレーン(メンブレーン)に焦点を絞った余剰次元理論(ブレーンワールド)が生まれています。

 余剰次元理論では、これまでコンパクト化(小さければプランク長さスケール、大きければ1ミリメートル程度)されていると考えられていた「余剰次元」が、もっと大きい可能性があるとされています。「曲がった時空の中で余剰次元が適切に歪曲していれば無限の広がりになる可能性があり、その場合でも私たちの目には見えない」と主張しています。

 さらに、私たちが住んでいるのは空間の3次元ポケットで、宇宙の他の部分は高次元である可能性や、時空はいくつもの異なる領域からなっており、領域によって次元の数が違う、というような主張もなされています。

 余剰次元理論の説明は大変難しいので、もし興味がおありなら、こちらをクリックして下さい。

 今の所、従来の標準モデルが正しいのか、ひも理論なのか、余剰次元理論なのかは決着が付いていません。これも上述の大型ハドロン衝突型加速器待ちです。
宇宙の誕生と終わりを解明できるか
 どの理論が正しいか分かっていないにしても、これらの理論はブラックホールや宇宙の誕生の謎を解く可能性があります。

 現在の時点では、単純なビッグバンは時代遅れになっています。宇宙はある瞬間に「ビッグバン」と呼ばれる現象によって生まれたことは定説になっていますが、一定のスピードで宇宙が膨張したとは考えられなくなっています。誕生後のある時点で、「インフレーション」と呼ばれる光速以上の速度で膨張したと考えられています。

 すべての物質(質量、エネルギー)は光速を上回ることはできませんが、空間そのものには光速の制限はありません。

 そして最近の観測によれば宇宙の膨張は加速を始めているらしいのです。今の観測と研究段階で、すでに縮小しないことは分かっています。それは暗黒エネルギーの存在によるものです。宇宙の膨張によって生み出される暗黒エネルギーが、比喩的に言うと宇宙の膨張を助けているのです。問題は生み出される暗黒物質の量が、膨張速度より大きいか小さいか、これによって宇宙に終わりがあるかどうかが決まります。

 ちなみに、宇宙に存在する物質の中で、私たちがよく知っている水素や酸素、鉄やアルミなどの通常物質は4%ほどしかありません。残りはまだ解明されていないダークマター(これによる重力効果で銀河が銀河としてまとまっていられます)が23%、そして宇宙を膨張させているダークエネルギー(正体は分かっていませんが、これがないと膨張の理由が説明できません)が73%です。

 こうしたことを明らかにするのには、宇宙がプランク長さスケールだった頃のことを研究しなければなりません。ひも理論や余剰次元理論はそこに道を開くのです。そして証拠を示すのが大型ハドロン衝突型加速器での実験です。もっとも、この装置でもまだ小さすぎる、エネルギーが足りない可能性もありますが・・・。

 ただし、ひも理論(超ひも理論、M理論を含めて)の研究によれば、アインシュタインの重力理論が間違っている可能性が指摘されています。その場合は暗黒エネルギーのない「泡」がやがて宇宙を満たし、加速膨張から通常の膨張になって宇宙の終わりはない、と言うことになります。いずれにせよ、断定的にしろ、推定的にしろ、判断できる段階ではありません。

 宇宙の誕生直後は高温のためにあらゆるものがプラズマ(原子から電子がはがれた)状態で、光はこれに邪魔をされて外へ出ることができず、宇宙は不透明だったはずです。宇宙の膨張とともに温度が下がり、光も自由に進むことができるようになり、宇宙は透明になりました。これを宇宙の晴れ上がりと呼んでいます。これが誕生から38万年後のことです。

 「時空とは何か」で書いた@は動いている者の時間の進み方は遅くなる、ということでした。高速になればなるほど時間は遅くなります。光は光速で動いていますから、@は光は年を取らない、とも言い換えられます。従って38万年前に宇宙に飛び出した光は今も宇宙を飛び回っています。その光が宇宙背景放射として全天で観測されています。それが誕生から38万年後の宇宙の姿を示しています。

 ところが38万年より以前の宇宙、四つの力が統一されていた頃の宇宙は見えません。それを探る可能性があるのが、大型ハドロン衝突型加速器であり、ひも理論や余剰次元理論なのです。新たに宇宙の扉が開かれることを期待して、「時空と宇宙」は筆を置きたいと思います。
宇宙論に関わる動画
 「パラレル宇宙」は《参考文献》の「パラレルワールド」を解説した映像です。「異次元への招待」は「ワープする宇宙」の解説映像です。リサ・ランドールさんも出演しています。アメリカの宇宙論学者の誰だったか、「ジョディ・フォスター」のような美人と評していました。
宇宙の前には何があったか パラレル宇宙 異次元への招待 Part.1
異次元への招待 Part.2 異次元への招待 Part.3 異次元への招待 Part.4
異次元への招待 Part.5
 《参考文献》 ビッグバン宇宙論/サイモン・シン著、  ワープする宇宙/リサ・ランドール著、  エレガントな宇宙/ブライアン・グリーン著、  パラレルワールド/ミチオ・カク著、  アインシュタインが考えた宇宙/佐藤勝彦著  2次元より平らな世界/イアン・スチュアート著
 東京大学に2007年、数物連携宇宙研究機構が設立されました。その機構長村山斉さんが08年の7月12日に市民講座を開きました。タイトルは「宇宙に終わりはあるか」です。市民講座ですから、難しい話ではありません。そのときのビデオが公開されています。80分ほどのビデオです。もし興味があれば、こちらをクリックして下さい。
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