紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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 チャドクガ 

 チャドクガの幼虫は、チャ、ツバキ、サザンカなどのカメリア属植物の葉を若中齢期には集団で食害する(写真3、4)。幼虫の体表には長さ0.1mmほどの毒針毛が多数分布し、これが人の皮膚にささると激しいかゆみと痛みを感じる。成虫や蛹にもこの毒針毛が残っているので、成虫が室内で飛びまわって毒針毛が振りまかれると、激しいかゆみと痛みが生じる。

  チャドクガの生活史と生態

 本種は本州以南に分布する。卵塊で産卵され(写真2)、孵化幼虫から中齢幼虫までは集団で生活し、1枚の葉に並んで一斉に食害する。幼虫は、通常6〜7(時に8〜10)齢を経過する。年2回発生し、秋に産下された卵で越冬するが、休眠性は浅く気温が上がれば発育を始める(細谷、1956)。4月中旬頃から第1回目の幼虫が現れ、この幼虫は7月上旬頃(三重県の場合)に成虫(蛾)になる(写真1)。成虫の寿命は平均約1週間ほどである。第2回目の幼虫は8〜9月に現れ、10月に成虫になる。

 チャドクガの天敵は、アシバガバチ類、スズメバチ類、ヒメバチ類、卵寄生バチ類、糸状菌(ボーベリア・バシアーナ)、寄生バエ、核多核体ウイルスなど多くのものが知られている。通常、これらの天敵類がチャドクガの多発生を抑えている。

  防除法について

 庭木の場合は、チャドクガの若齢幼虫が集団で食害しているところを見つけ、枝ごと切除するか、チャドクガと対象植物に登録のある家庭園芸用スプレー剤(カダン・スプレー等)を吹きかける。サザンカの植え込みなどを一斉に防除する場合には、若齢幼虫の時期に、天敵や人畜に影響がほとんどなく登録のあるBT剤(バシレックス水和剤など)を用いると良い。

 チャドクガの若齢〜中齢幼虫は集団で葉を食害しているので見つけやすい。孵化幼虫が食害を始めると、葉の上面に密集し、幼虫の体色と食害とで葉が黄褐色に見えるので、若齢幼虫のコロニー(集団)数を早期にかつ比較的容易に見取り調査することがでる。

  発生予測について

 チャドクガの発生予測は、研究蓄積が少なく難しいのが実状であるが、今後、種々の情報を総合して予測を行っていきたいと考えている。最近の発生状況をみると2003年に各地で本害虫の発生が報告されており、多発年であったと考えられる。この他、文献上でチャドクガの多発が報告された例は、1955年(細谷、1956)、1996年(大滝・滝野、1998)に見られる。今後、多発年における気象条件等を解析していきたいと考えている。
 
(写真をクリックすると拡大します)
(写真1)
チャドクガの成虫。全体的に黄色をしている。幼虫時の毒針毛が成虫の尾部に残存しているので、成虫(蛾)に触れると(かゆ)く痛くなる。
(2008.7.5撮影)

(写真2)
チャドクガの卵塊。蛾の鱗粉で覆われ、毒針毛も含まれている。葉裏に産卵されることが多い。
(写真3)
チャドクガの若齢幼虫が集団でサザンカの葉を食害している。
(2008.8.8撮影)

(写真4)
チャドクガの中齢幼虫が並んでツバキの葉を食害している。
(2008.7.23撮影)
(写真5)
チャドクガの老齢幼虫が葉裏でツバキの葉を食害している。この齢期の幼虫は分散して葉を食害する。
(写真6)
チャドクガ若齢幼虫の脱皮殻。
幼虫や脱皮殻表面の毒針毛に触れると(かゆ)く、さらには痛くなる。
(写真7)
チャドクガ幼虫に寄生した寄生蜂のまゆ(幼虫の左側の白い2個)

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