紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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紀伊半島地域における地震などの様々なリスクを考える

 
1)紀伊半島地域に大きな被害をもたらした歴史上の大地震と津波

 紀伊半島に位置する三重県、和歌山県、奈良県は、歴史上、幾多の地震災害に見舞われ、大きな被害を受けてきました。下記のPDFファイルには、明応地震(1498年)以降に、紀伊半島地域に被害を与えた海溝型地震、内陸の活断層が動いた内陸型地震、フィリピン海プレート内で地殻変動が起こったプレート内型地震のリストを載せてあります。

 その他に、フィリピン海プレートの移動に伴うエネルギー蓄積に関係して近年になって起こった長野県西部から近畿、北陸、中国、四国地域にかけての紀伊半島以外での内陸型地震についても載せました。昭和東南海・南海地震前後の内陸型地震の発生状況を見ると、この海溝型巨大地震の前後に幾つも発生していることが分かります。

 昭和東南海(1944年)・南海地震(1946年)の後に福井地震(1948年)などの内陸型地震が起こっており、その後やや静穏な時期がありました。しかし、その後、20世紀末から現在に至るまでに、新たな海溝型地震の先触れと想定される兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)(1995年)など比較的大きな内陸型地震が発生し始めています。

 紀伊半島に関係する海溝型巨大地震が歴史的に繰り返し発生してきましたが、推定マグニチュードの大きさ、死者数、津波による地形変貌からみて、明応地震は、15世紀以降では最大の津波被害をもたらしたと考えられます。明応地震とそれに伴う大津波で海岸砂丘が破壊されて海と繋がり浜名湖が形成されたこと、安濃津(現在の三重県津市)の海岸砂丘が破壊されて岩田川の流路が変わったこと、和歌山県でも海岸砂丘の破壊による紀ノ川の流路の変化など大規模な地形変貌が起こりました(矢田俊文、2005)。また、明応地震に伴う津波の遺跡から、三重県鳥羽市では高さ15mもの津波が襲ったとされています。そして、明応地震と津波による推定死者数は全国で3〜4万人とされていますが、今よりも人口がはるかに少ない15世紀末のことですので、その震災の大きさはすさまじいものであったと思われます。

 ところで、浜岡原子力発電所の津波に対する安全管理として、安政東海地震を想定して津波対策が考えられています(中部電力ホームページ:浜岡原子力発電所)。中部電力は、津波の高さを6mとみなし、原発の敷地の高さが満潮を考慮しても6mあり、前面に高さ10〜15mの砂丘があるので、津波に対する安全性が確保されているとしています。しかし、歴史的には、安政東海地震よりも破壊的であった明応地震を想定する必要があり、東日本大震災の例をみるならば、明応地震の津波の威力に更に安全率をかけたものを想定する必要があります。浜岡原発の海側にある砂丘についても、上記の明応地震の場合のように、過去に砂丘があちこちで破壊された具体例があることから、その存在が必ずしも安全確保の保障になるとは言えません。さらに、浜岡原発は、想定される東海地震の震源の中央部に位置し、マグニチュード8.5〜9の直下型地震に襲われる可能性が高いと考えられます。この場合には、原子炉及び附属する配管をはじめとする設備・機器類が破壊され、重大事故に至ることは不可避と考えられます。

 内陸型活断層の活動周期は長く千年、万年単位のスパンのものが多く、内陸型活断層はいつどこで起こるか分からないといった側面がありますが、一方、フィリピン海プレートの移動エネルギーの蓄積に伴って内陸型地震が起こりやすい地域も見られます。紀伊半島の内陸型活断層は、志摩半島から紀ノ川河口に至る中央構造線の北側に多数発見されています(地震情報サイトJISホームページ)。内陸型活断層の地震は比較的地表面に近く直下型となる場合が多く、地震のエネルギー(マグニチュード)に比べて被害が大きくなりやすいという特徴があります。阪神大震災(M7.3)、三河地震(M6.8)などはそのような例と言えます。

 内陸型活断層が確認されていない地域でも、例えば、吉野地震のようにプレート内型地震が起こった場合にも被害が生じます。
  三重県が東海・東南海地震に伴う津波による浸水区域と津波到達時間を発表
  紀伊半島地域に大きな被害を出した地震と関連する地震(明応大地震以降)リスト(PDF)
  上記リストを作成するに当たって参考にした本・論文

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