87年の時間差

   

 大正7年(1918年)に撮られた写真と、2005年6月7日に撮った同じ場所。 同じ場所なのにモノクロ写真のほうは、まったく違う場所のように時空のかなたに入り込んで しまう気がする。この橋を渡った右側の建物があるところに、自分が生まれ育った家があって 台風がくると下の川の水かさが急増し、びくびくしながら過ぎるのを待ったものだ。浸水に備えて タタミを2階に上げることもたびたびあった。
 実際、昭和28(1953)年7月18日の紀州水害では、家の中を濁流が貫通し、家財や店の 商品すべてを流失した。私は3歳で記憶に乏しいが、母が私をおぶって妹を抱えて高台に避難したことを 最近知った。太い四角の大黒柱に、冠水した高さの跡ががずっと残っていた。  


 
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