◆ 油を売る
江戸時代の「油売り」からでた言葉で、仕事を途中でなまけ、むだ話などをして時間をつぶすこと。
当時、行灯(あんどん)の油は升で量り売りをしていたので、油売りは油のしずくが切れるまで、
客と世間話をしながら待っていた。
その様子が怠けているように見えたことからきた。
また、小間物屋が女性を相手に髪の油を売る時も同様で、世間話をしながら商売をした。
[い]
◆ 一目おく
囲碁用語から出た言葉で、自分より優れた人物として、相手に敬意を払うことを意味する。
囲碁の世界では、対局時に自分が一目先に置くことは、相手を強い者として一歩譲ることを意味した。
そこから「彼には一目も二目もおいている」などと言うようになった。
[う]
◆うだつがあがらない
家を建てて棟上げすることを「うだちが上がる」というが、「うだち」は木造の家の梁の上に立てて、
棟木を支える短い柱のこと。
「うだつ」は「うだち」のなまったもので、「うだつが上がらない」は、棟上げができないことを意味した。
「うだち」というものは、下に梁があり、上からは棟木に頭を押さえつけられている状態なので、そこから地位や生活程度が低いままで、
少しもよくならないことの例えに使われている。
◆ 内股膏薬 』(うちまたこうやく)
内股に付けた膏薬は、両もものどちら側にもべたべたついて、薬としての効果がないということから、信念がないため、
その時々の都合であちらについたり、こちらについたりすること。
また、そのような人をさす。
これに似た言葉に「理屈と膏薬はどこへでも付く」ということわざもある。
◆うんともすんとも
江戸時代、ポルトガル人が伝えた「ウン・スン・かるた」というゲームでは、「ウン」は一の意味「スン」は
最高の意味で「ウン・スン」という言葉がよく使われたが、やがて天正かるたが大流行するようになると、
「ウン・スン・かるた」はすたれ、「ウン」とも「スン」とも言わなくなってしまった。という
ことから、全然返事をしないことを意味するようになった。
[お]
◆おかぶ
江戸時代、特定の人だけが独占した職業上、営業上の特権「株」からきたことばで、その人の得意中の得意という意味。
この独占、特権と言う意味が転じて、一般的に得意とするものの意味になった。
職業上の特権を意味する「株」には今でも相撲社会における「年寄株」がある。また、ある人が得意とする技などを、
ほかの人がもっと上手にやることを「お株を奪う」という。
◆おけらになる
虫の「ケラ」が前足を広げている格好が、勝負に負けてお手上げになった状態と似ているところから、
有り金を使い果たし、無一文になってしまうこと。
◆おしゃか
鋳物職人が火力が強すぎて不良品ができると、「火が強かった」と言った。これを東京の人は、
「ヒ」を「シ」と発音したので、「シガツヨカッタ」になり、いつの間にか「四月八日」に
変わった。この日はお釈迦様の誕生日なので「おしゃか」になってしまった。
◆おせっかい
匙(さじ)の一種の「切匙」(せっかい)とは、すり鉢の内側や容器のすみについたものを取るときに
使う道具のことで、細かいところに入り込んで、ものをかき出すことを意味することから、
他人のやっていることによけいな手出しをすること。
◆おやつ
時刻の「八つ」(2時)からきたことばで、間食をすること。またその食べ物の両方を指す。
昔から午後のこの時刻に、お菓子や果物などの間食をする習慣があったことから、間食を「お八つ」と呼ぶようになった。
現在は時刻にかかわらず、三回の食事以外に食べることをいうようになっている。
[か]
江戸時代になると、人物の類型的性質を面白く描いた「世間息子気質」、「世間娘容質(かたぎ)」「浮世親仁(おやじ)形気(かたぎ)」などの“気質物”という浮世草子が流行した。
明治時代になると、坪内逍遥(しょうよう)が当時の学生気質をテーマに書いた小説「当世書生気質」を発表して、世間から注目を集めた。
◆かしましい
女は一人でいれば静かだが、二人三人と集まっておしゃべりに夢中になると、まことにやかましい。
そこから女三人集まった「姦」という字がつくられ、「かしまし」と読むようになった。
◆かも
鴨はつかまえやすく、数も多いため手に入れやすい鳥だったことから、利用しやすい人、
特に勝負事などで楽に負かすことの出来る相手のことを言う。
◆かまとと
「かま」は蒲鉾で「とと」は幼児語で魚を意味する。「かまぼこ」を、これは「とと」かと聞いたということからきている。
知っているのに、上品ぶって知らないふりをすること、また、そのような人をさす。
江戸時代末期に上方(大阪)の遊里で使われたのが最初で、やがて、一般に広まり、特に性的な面で知らないふりをする、
という意味で使われた。
近頃では、この言葉は、「ととかま」(かまととの反対)とかかまゴジラ(ひどいかまとと)とかの形にひねって使われている。
なお、若者の間では、上品ぶったり、いい子ぶったりする人を「ぶりっ子」と呼んでいる。
◆皮切り
鍼灸(しんきゅう)療法から出たことばで、物事の始め、最初のことを意味する。
最初に打つ針や最初にすえる灸は大変痛く、まるで身の皮を切られるようだ、ということから使われた言葉で、
何事も最初は苦しいとの例えとして「皮切りの一灸」と言うことわざがある。
なお、灸をすえて効果があがるところを「ツボ」と呼び、そこから「ツボを抑える」「ツボを心得る」などの言葉が出来た。
[き]
◆几帳面
建築用語から来たことばで、折り目正しくきちんとしていること。
「几帳」は、室内の仕切りに立てた家具のことで、「面」は、柱の角のことをいい、この角をきちんと仕上げる
ことを面をとるという。
几帳の柱にこの面のとり方がが多く用いられたことから、大変きちんとしていることを「几帳面」と言うようになった。
[く]
◆くだを巻く
糸車の管(くだ)は、錘(つむ)に差して糸を巻き付ける軸のことで、糸車を廻すと管がブーブーと
音をたてる。その音が耳ざわりなので、そのことから、酔っぱらいがくどくどと言うことをさすようになった。
[け]
◆けりをつける
助動詞の「けり」は、過去(〜た)を表したり、詠嘆(〜たなあ、〜だったなあ)を表したりする。
そのため和歌や俳句で「〜ありけり」「〜なりけり」などと「けり」で終わる文章が多かったことから、
物事の決着をつけることを意味するようになった。
◆けんもほろろ
「けん」も「ほろろ」も共にきじの鳴き声で、無愛想に聞こえたことから、人の頼みや
相談を全く取り合わず、はねつけることの意味に使われている。
[こ]
◆ごまかす
江戸時代に作られた「胡麻胴乱」と言う「胡麻の菓子」は、見かけはおいしそうだが、
食べてみると中に何も入っていないのでおいしくなかった。そこから、表面だけをとりつくろう
ことを「胡麻菓子」と呼んだのが動詞化し「ごまかす」となって、人目を紛らわすことや、
あざむくことに使われるようになった。
[さ]
◆さじを投げる
薬を調剤する「匙」(さじ)を「投げる」とは、医者が患者を診て治る見込みがないと診断したことを意味する。
そこから、これ以上やってもしょうがないと断念する意味に使われるようになった。
江戸時代、大名の侍医は「おさじ」と呼ばれ、患者を生かすも殺すも、この侍医の「さじ加減」一つで決まったという。
◆さびしい
金属の「錆」からでたことばで、静かで心細い、物悲しいことを意味する。
錆が生じると、ザラザラと荒れてくることから、平安時代景色が荒れているというときに、「さびし」ということばが
使われた。また、貴族が没落すると、その境遇についてもいうようになった。
◆さばを読む
語源には、「さばの数え方」説と、「魚市場の名称」説とがあり、意味は、数量をごまかすこと。
「さばの数え方」説では、さばは腐りやすい魚なので、早口で数えたため、数を飛ばすことが多かったことからとされる。
「魚市場の名称」説では、江戸時代、魚市場のことを「いさば」と言い、そこでの魚の数え方を、「いさば読み」と
言ったのが略されて、「さば読み」となったとされる。
[し]
◆しのぎを削る
刃物の「鎬」(しのぎ)とは、刀の刃と脊との境い目の線状に小高く盛り上がっている部分のことで、
刀と刀で激しく切り合うときは、鎬を削り取ってしまったということから、激しく戦うことを意味する。
[す]
[そ]
◆そりが合わない
「そり」は「反り」と書き、刀身の曲がり具合のこと。刀を鞘(さや)に納めるとき、刀と鞘は同じ曲がり具合で
なければいけない。そこから気が合わない、うまくいかない、仲がしっくりいかないことなどの例えに
使われるようになった。
その反対に、気が合うことは「うまが合う」といい、乗り手と馬との呼吸が合うことを言う。
[た]
◆だらしない
「しだらない」からきた言葉で、「しだら」とは自堕落の転訛したもので、それを倒置した「だらし」に、強調の「ない」がついたもの。
そこから、身を持ちくずした格好、しまりがないこと、きちんとしていないこと等に使われるようになった。
◆だめを押す
囲碁用語で「だめ」とは、むだな目のことで、白、黒双方の石の境にあって、どちらの所有にもならない所。
そこへ終局後、石をならべていくことを「だめを押す」という。そのことから、大丈夫だとわかっていても、
念にために・・・という意味に使われるようになった。
[ち]
◆ちゃらんぽらん
ポルトガルからきた「チャルメラ」は「チャラメラ」「チャンメラ」「チャルメロ」などさまざまな呼び方をされていたが、
そこから、「チャルメラ」という言葉と「チャランポラン」という言葉が生まれたとされている。
そのチャルメラのおかしげな音を聞いて、何のことだかさっぱり解らなかったことから「わけがわからない」
「いいかげんな」「でまかせ」などの意味に使うようになった。
◆ちょうちん持ち
江戸時代の「提灯(ちょうちん)持ち」から出たことばで、他人の手先として、その人に有利になるように働くこと、
また、必要以上に人をほめあげること。
提灯持ちは、身分の高い人の夜の外出や婚礼などのときに、提灯を持って先導する人のこと。
そこから、えらい人にへつらう者を指すようになり、冒頭の意味合いが生まれた。
◆ちんぷんかん
「陳分漢」と書き、「陳分」は中国人によくある姓名で、「漢」は熱血漢のように男性を
意味する語。江戸時代、中国人の名前は読みにくく、解りにくかった。そこから世間の
人が「ちんぷんかん」を「なにがなんだかわからない」という意味で使ったと言う。
もう一説に、中国には「チンプトン、カンプトン」という言葉があり、チンプトンは、聞いても解らない。
カンプトンは、見ても解らないという意味から、見ても聞いても訳が解らない事に使われるようになったという説もある。
また「珍糞漢」「陳粉漢」「陳奮漢」などとも書き、儒学生が漢語をしゃべっているのを、
ひやかしていったもの。と言う説もある。
なお、同じような語源を持つ言葉に「頓珍漢」(とんちんかん)があるが、これは鍛冶屋が
交互に打つ槌(つち)の音がうまくそろわないところからきたと言う語源説もある。
[つ]
つつが虫(恙虫):
ダニ類の一種で、1oばかりのごく微小な体で、うす赤く、無色の毛が生え、幼虫は真っ赤でもっと小さい。成虫は植物質を食べるが、
幼虫は野ねずみの耳に付着し、体液を吸う。この幼虫時代に川べりの田などで働く人を襲い、つつが虫病を冒す。
◆月なみ
「月例」という意味の「月並」からきたことばで、平凡、ありきたり、陳腐などを意味する。
「月並(月次とも書く)は、本来は、月ごとの意味で、ある物事が毎月決まって行われることをさす言葉だった。
これが、現在のような意味になったのは、明治時代、革新的な俳人の正岡子規が、月例句会を開いていた旧派の俳句を「月並俳句」
「月並調」と言って批判して以後のこと。
ありきたりで進歩がなく、陳腐な俳句という意味から、あらゆる陳腐なことをさすようになった。
[て]
◆てくだ
語源には「手段」(てだん)がなまったもの。
《てだん→てくだ》
機織(はたおり)の道具「管」(くだ)に手がついたもの。
《て+くだ》などの説もあるが、曲芸の一種の水芸から出た言葉と言う説が有力で、意味は、人をだます手段、人をあしらう方法を言う。
水芸の手管(てくだ) は水を出す管で、芸人はそれを客に見えないように手に隠し持って演じていた。
そこから、「人をだます」意味に使われるようになった。
また、「てくだ」は、「手練手管」(しゅれんてくだ)ともいい、「てれん」は、「手練」と同じく熟練した鮮やかな腕前と
いう意味。
なお、同じような意味を持つ言葉に「手玉に取る」がある。これは、子供が遊ぶ「お手玉」から出たことば。
◆手ぐすねを引く
「手に薬煉(くすね)を引く」の意味から来た言葉で、充分に用意して、相手を待ち受けること。
「薬煉」とは、松脂(まつやに)を油で煮て煉り合わせた一種の補強材で、兵士は合戦の前に薬煉を弓の弦に塗り、
敵の攻撃を待ちかまえたのである。
そこから、準備を整えて相手を待ち構える状態をいうようになった。
◆でたらめ
さいころを振ってよい目がでるか、悪い目がでるか、どちらでもかまわない、出た目にまかせる。
後はなにがあっても知ったことではない。というでまかせで、筋の通らないことを言ったり、行ったり
すること。
[と]
◆土左衛門(どざえもん)
実在の人物の名前からとった言葉で、水死者のことを言う。
享保のころ(1720年代)の相撲界に、成瀬川土左衛門という力士がいた。この男が色白でぶくぶく太っていたので、
水にふやけた溺死人(できしにん)のように見えた。
そこで水死人を見た人が、「土左衛門のようだ」と言い始めたことから広まった。
なお、「八百長」という言葉も八百屋の長造という実際の人物から来た言葉である。
◆どさくさまぎれ
江戸時代末期に禁止されていた博打(ばくち)の現行犯は、佐渡へ島送りにされ、金山で
働かされた。そこで博徒は、賭場の手入れのことを佐渡を逆にして「どさを食う」と言った。
ここから手入れの際に起こる騒動や混乱を「どさ」と言い、それが現在の「どさくさ」に
なり。その混乱している状態を利用して、自分の目的を果たすことを「どさくさまぎれ」
と言うようになった。
◆どたんば
江戸時代の犯罪者が、刑場で首を切られる時は、土で築いた壇の土壇場(切場)に引き出されて刑の執行を受けた。
そこから物事の最後のせっぱつまった場面を意味するようになった。
◆どじをふむ
「鈍遅」説と「土地」説がある。
「鈍遅」説は、動作が鈍くて遅れている人をさしたことばが、後に失敗することを表すようになった。
「土地」説は、江戸時代、相撲で土俵外に足を出して負けることを「土地を踏む」と言ったことから、
失敗すること、間抜けなことを意味するようになった。
[な]
◆成金
将棋で「歩」が敵陣に入って「金将」と同じ資格を得ることから、歩のような身分の低い者が、急に金のような力を
持つことを指すようになった。そのようなことから今日では、土地を売ったり、事業に成功して急に金持ちになった
人のことを、土地成金、新興成金などと呼んでいる。
[に]
◆にやける
「若気」(にやけ)を動詞化したことばで、男が女のように弱々しく、変にしゃれていることを意味する。
「若気」(にやけ)とは、鎌倉・室町時代に諸大名のそばに仕えていた小姓(こしょう)や
衆道(しゅうどう)(男娼=男色)のことで、これらの男性は化粧などをしていて、美しく装っていた。
そこから、女のように弱々しい男を意味するようになった。
一般的には、ニヤニヤ笑って、態度をはっきりさせない人などにも使っている。
[ぬ]
◆濡れ衣
「実のない」を「蓑(みの)ない」にかけてできたことばで、蓑がないと雨に降られて衣(着物)が濡れる。
そこから蓑ないこと→実のないこと、真実でないこと、根拠のない浮き名、無実の罪、事実無根の
ことを「濡れ衣を着せる」というようになった。
[ね]
[は]
◆はったり
喧嘩の時、いきなり相手をはり倒すなどして、乱暴な行動に出て、自分を実際の力より
強くみせることからきたもので、「はったりをかける」「はったりを利かす」などと、
自分の力を誇示することに使われる。
◆ばてる
「果てる」からきたことばで、これ以上できないところまでいって、疲れきってぐったりしてしまうさまを言うようになった。
◆はなむけ
「馬のはなむけ」が略された言葉で、旅立つ人に贈る金品、詩歌などをいう。
漢字では「餞」「贐」と書く。
平安時代、旅立つ人の行く方向に馬の鼻を向けて、道中の安全を祈った風習からきたもの。
なお、贈答用の物品を「引出物」というのは、平安時代、祝宴の終わりに主人側が馬を庭に引き出してその馬を客に
贈ったことから生まれたことば。
◆羽目をはずす
板を縦または横に平らにはることで、その羽目板をはずすということは、常識からはずれる。
即ち調子に乗って度を過ごした人の様子をさすようになった。
[ひ]
◆ひやかし
紙すき職人から来た言葉で、品物を見たり値段を聞いたりするだけで、何も買わないことや、からかうことを意味する。
江戸時代、浅草紙を作っていた職人たちが、紙の原料を水に浸して「冷やかし」ている間、近くにあった吉原遊郭に出かけて、
張り見世の遊女を見て回った。
仕事中なので、からかったり品定めするだけで、決して遊女を買わなかった、ということからきたものです。
漢字では「素見」「素通」などと書く。
◆ピンからキリまで
ポルトガル語からきたことばで、始めから終わりまで、最上の物から最低の物までという意味。
「ピン」は、ポルトガル語のピンタ(=点)を略した語で、かるたやさいころの目の1のこと、「キリ」は、クルス(=十字架)の転訛した語で、
10のこと、つまり、「1から10まで全部」の意味である。
「キリ」は、日本語の「切り」で、区切り、切れ目である、とする説もある。
また、利益の一部を取ることを、「ピンはね」というのも、「ピンタ」の下の略からきていて、「一」が転じて「一部分」の意味になり、
「一部分をはねる」という意味である。
[ふ]
[へ]
同じような意味を持つ言葉に「虎の子」がある。これは、虎は自分の子供を非常に可愛がり
大事にすることからきている。
◆べらぼう
人名からきたという説と竹の「へら」からきたという説がある。
まぬけ、のろま、愚か者など、人をののしることば。
人名説では、江戸時代の寛文年間に、大坂の見世物小屋に出ていた人物の名前からきたという。
この人物は「可坊」(べらぼう)「便乱坊」(べらぼう)と
呼ばれ、全身が真っ黒で、頭がとがり、目は赤く、あごは猿に似ていた。
そこから醜い人を「べらぼう」というようになり、さらに人をののしる時に使うようになった。
「へら」説では、米をつぶす竹製のへらを「箆棒」(べらぼう)とよび、そこから、
飯を食べるだけで何の役にも立たない人(ごくつぶし)のことを「べらぼう」といった。
[ほ]
[ま]
◆卍巴(まんじともえ)
二つの渦巻きという意味からきている。敵と見方が追いつ追われつ、上下左右に変転し、入り乱れることをいう。
「卍」は、右旋回の渦巻きの意味で、ヒンズー教の太陽神ビシュヌの胸毛が右旋回であったところからきている。
「巴」は、字の形が示しているように、左旋回の渦巻きの意味。
このそれぞれ正反対の方向に旋回する渦と渦がぶつかり合うことを「卍巴」(まんじともえ)と言ったもの。
なお、三者が互いに争って入り乱れることを「三つ巴」という。
[み]
◆みえ
動詞の「見える」の連用形が名詞化したもの。
他人によく見られるように、自分を飾ることをいう。
「見栄」と書くのはあて字である。
本来は単に見える様子を意味したが、それが外観、外見を飾ることの意味になり、
「みえを張る」「みえをつくろう」などと使うようになった。
なお、歌舞伎役者が目立つ表情やしぐさをすることを、「見得を切る」というのも、同じ語源からきたものです。
[む]
[め]
◆目安がつく
江戸城の評定所におかれた「目安箱」から生まれた言葉で、見当がつく事と言う意味。
「目安箱」は、八代将軍の徳川吉宗が大衆の意見を聞き、それを政治に生かすために設けた投書箱。
そこからおおよその見当がつくことの意味になった。
なた、同じような意味の言葉に「めどがつく」がある。
これは、目でみることのできる所の意味からきたもの。
◆メリヤス
この語源には、スペイン語の「medias」(メディアス)説とポルトガル語の「meds」(メイアス)説とがある。
両語とも、伸縮するように作った、機会編みの綿織物のこと。
両語とも、本来の意味は「靴下」である。
この靴下に使われた生地を日本では「莫大小」(メリヤス)と書いた。
「莫」は「無」という意味で、大きい人でも、小さい人でもぴったり合うという意味から使われた漢字。
これは明治初期、大阪で開かれた第一回全国勧業博覧会に出品されたメリヤス製品を見て、
政治家の三条実美(さねとみ)が命名したものと言われている。
[も]
◆もどき
「擬き」(もどき)と書き、「擬く」の連用形が名詞化したもので、意味はある物に似ていることをいう。
「擬く」は、似せて作ることで、そこから偽物を作って、本物に見せかけることを言うようになった。
味が雁の肉に似ている「がんもどき」。
葉が梅の葉に似ている「梅もどき」などの例がある。
[や]
同様の言葉に「焼きを入れる」がある。これも刀の刃を焼いて切れ味を増すように「人に制裁を加えて、鍛える」という
ことからできたことば。
◆やじ馬
「おやじ馬」が略されたもので、おやじ馬、つまり老馬は常に若い馬に後について歩いた。
そこから人間の場合にも、人の後について、面白半分で騒ぎ立てる人のことをいうようになった。
◆やにわに
「矢庭に」と書き、矢を射る場所、矢の飛んでくる場所からきている。いきなり、だしぬけに、という意味。
矢庭にいるときは、すばやい動作で事を運ぶことが必要であった。
そこから「矢庭に」は、「たちどころに」「すぐに」などの意味に使われるようになった。
◆山の神
古来山の神は女性と考えられていて、この神は機嫌が悪い、嫉妬心が強い、醜い姿をしている、
などの特徴をもっていたため、妻を卑しんでいう場合の例えになった。
◆宿六
「宿」は家のことで、「六」は役立たずの意味の「ろくでなし」を擬人化したもので、「宿のろくでなし」の略。即ち
亭主のことで、妻が夫を卑しめ、又親しんで使う呼称のこと。
◆やけ
「焼ける」が転じてできた言葉で、自爆自棄になることを意味する。
本来は動詞「焼ける」の連用形が名詞化した「焼け」である。
大切な物を焼いてしまった時に起こる捨てばちな気持ちを現している。
「自棄」と書くのはあて字。
なお「やけ」を強めた言い方が「やけのやん八」「やけの勘八」などで、略して「やけっぱち」という。
[ゆ]
[よ]
◆夜なべ
「夜並」(よなべ)からという説と、「夜鍋」(よなべ)からという説とがあり、
夜まで仕事をすること、夜業すること。
「夜並」説は、夜を昼に並べることからきたとするもの。
「夜鍋」説は、夜仕事をする時、鍋で物を煮て食べながらしたということからきている。
◆より
「縒り」「撚り」などと書き、糸や縄の「より」からきたことば。
ねじり合わせること、ねじり合わせたもの。
糸を強くする為に何本かの糸をねじり合わせて、一本の糸にすることを「よりをかける」いう。
また、かけたよりがゆるんだのを元通りにすることを「よりを戻す」という。
ここから、技能を発揮しようと一心にそのことに取り組むことを「よりをかける」といい、別れた男女がまたもとの仲に戻ることを、
「よりを戻す」と言うようになった。
[ら]
[る]
[れ]
[ろ]
◆ろくでなし
「ろく」は「陸」と書き、大工道具で水平を測る器具のことで、陸地のように平らである、
という意味。そこから「物の状態が正しい」「完全だ」「まじめだ」などを意味するようになった。
その否定語が「ろくでなし」で平らでないこと、曲がった者、役に立たない者、のらくら者の意味になった。
「ろく」はその他「ろくに・・・・ない」のように打ち消しの意味でも使われている。
[わ]