鈴木雅彦
 市政報告のページ
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津市の財政を揺るがす問題
樺テセンターパレスの経営危機

《 センターパレスは第3セクターの会社 》

 センターパレスは市役所の移転に伴い、跡地にショッピングセンターとして昭和60年にオープンした施設です。ビルを運営しているのは、樺テセンターパレスという会社で、津市を筆頭株主とする「第3セクター」です。設立は昭和53年3月です。

 社長は歴代市長が務めており、現在は松田市長が社長を務めています。法律上の津市の責任は、出資した資本金分のみですが、経営の最終責任が津市に求められる可能性は常にあります。

《 ところがダイエーの撤退で 》

 開業当初は中心市街地の核として順調に推移していましたが、バブル景気の崩壊以後、大店法による郊外店の増加の影響も加わって、急速に集客力が低下しました。そして契約期間を残したまま、キーテナントであるダイエーが撤退しました。これによってさらに集客力の低下に拍車がかかり、センターパレス内の地元専門店の撤退が続出しました。

 その後、津市が津駅前にアスト津の建設を進め、ホテルを誘致したことが都ホテルの経営を圧迫し、同ホテルの撤退の話が出てきました。これは明らかに津市の失政と言えるでしょう。近鉄との交渉の結果、地元商業者が資本金を出し合って「樺テセンター」を設立し、「都ホテル」の名称を使用してホテルを経営することになりました。しかしノウハウがありませんから、実際の運営は、近鉄の子会社に委託しました。

《 津市自身がセンターパレスに入居 》

 ダイエーは撤退後も、契約期間中は家賃を払っていました。しかし期限が来ても、あとに入る企業がありません。苦肉の策として津市自身が入居することになり、社会福祉協議会や市民活動センターなどが設置されました。

 一昨年(2006年)には、地下のマルヤスが撤退する話が持ち上がりましたが、交渉の末、昨年4月に一階に移りました。この過程で、1階の店舗配置をどうするかが長らく示されず、センターパレス横の「真ん中広場」で様々なイベントを主催し、市民活動センターのボランティアもしていた店舗が追い出される形で撤退せざるを得ないという事件も起きました。

 しかし今度は地下が空いてしまいましたので、2008年度に8000万円掛けて工事し、「真ん中交流館」を設置することになりました。

《 都ホテルの家賃は1680万 津市が払う家賃は3億円強 

 これで津市が支払う家賃は年間3億2400万円にまで膨らみました。合併と職員削減で市の施設には空きスペースがたくさんあります。これを利用すれば3億円も払う必要はありませんが、そうした空きスペースの利用は全く考慮されませんでした。

 その一方で、開業時には1億2000万円、バブル時の平成5年には1億5000万円を超えていた都ホテルの家賃は、何回かの値下げのあと、ついに2007年の4月、1680万円に値下げしました。1億3000万円以上もの値引きです。

 2008年4月から水道の値上げや市民センターの利用料を取るなど、市民には負担を押し付けておきながら、都ホテルには大サービスをする上に、3億円の家賃、つまり税金で穴埋めをするのですから、筋の通らない話です。津市に財政難を口にする資格はありません。

《 このままでは第二の夕張に 》

 経営危機のそもそもの原因は、ダイエーや近鉄から預かった敷金と保証金16億円と資本金を、建設資金に充てたことです。このため手持ち資金がなくなったのです。これは会員権を販売してコースを造成して破綻してしまったゴルフ場と同じやり方です。

 これまでに津市が払った敷金1億5000万円も、撤退した店舗への保証金の返還に流用されて消えました。2010年4月にはダイエーに預かり敷金8億円返還せねばなりません(本来は契約終了時に返還せねばなりませんが、返還を猶予してもらっています)。

 市は分割払いをお願いするようですが、ムシの良すぎる話です。ダイエーが応じるとしても、通常の投資よりも有利な金利を求められるはずです。分割に応じてもらえなかったら、長期借り入れを起こさねばなりませんが、こんな経営状態の企業に金を貸すお人好しの銀行はありません。

 ただ一つ手段があるとすれば、津市が保障することです。恐らくそれは、分割返還でも同じことでしょう。どちらの場合も、いざというときには、津市が肩代わりすることになります。

 このほかに、近鉄への敷金・保証金の返還資金も4億円必要です。事態は津市の財政問題の中でも、最重要の課題になっていると言えます。「財政難」の時ですから放置できる問題ではありません。市の財政を健全化するためにも、そこで働く人の生活を守るためにも、全市民的に議論し、今後の在り方を検討する必要があります。

《 樺テセンターパレスの財務状況(21年3月期) 》

 流動負債373,476(20年3月期、351,897)千円に対し、流動資産33,064(同23,403)千円と、実に流動比率は8.85(同6.65)%しかありません。これは支払い能力が極端に小さく、事実上は支払い能力ゼロと言わざるを得ない状況を示しています。このため、運転資金として短期借入金が常時必要な状態です。

 負債合計は2,389,391千円で資産合計3,806,331千円を下回っており、一見健全に見えますが、固定負債の内、預り保証金323,800千円、預り敷金1,322,644千円に対応するのは、現金・預金ではなく、資本金とともに有形固定資産に変わってしまっており、現金・預金はわずかに16,050千円しかありません。これは、資金の固定化を端的に示しているものです。

 また土地については20億円余りを計上していますが、これは平均坪単価105万円の購入時の価格です。不動産鑑定士によれば、坪55万円と考えるのが妥当とのことです。しかし「真ん中広場」と歩道の間に一部民有地があり、もし売却となった場合、これがネックになって、さらに地価が下がる可能性があり、実態としては債務超過の財務内容と見るべきではないでしょうか。
樺テセンターパレスの最新決算(21年3月期、単位:円)
科   目 金   額 科   目 金   額
(資産の部) (負債の部)
流動資産 33,064,707 流動負債 373,476,704
  現金・預金
  未収入金
  前払い費用
  仮 払 金
  繰延税金資産
16,050,788
14,681,358
1,666,529
160,392
505,640
  短期借入金
  未払い金
  未払い費用
  未払法人税
  前 受 金
  預 り 金
  短期預り保証金
  短期預り敷金
250,262,000
17,774,676
303,168
7,107,300
3,284,918
402,310
70,908,332
23,434,000
固定資産 3,773,267,211 固定負債 2,015,914,951
 有形固定資産 3,728,555,068   社債
  長期借入金
  預り保証金
  預り敷金
  退職給付引当金
  退職給与引当金

200,000,000
155,472,000
323,800,011
1,322,644,182
862,758
13,136,000

  建物
  構築物
  器具備品
  土地
1,604,517,865
9,829,117
51,578,605
2,062,629,481
 無形固定資産 3,526,640
  借地権
  電話加入権
3,000,000
526,640
負債合計 2,389,391,655
 投資その他の資産 41,185,503 資本の部
  投資有価証券
  関係会社株式
  繰延税金資産

2,050,000
34,000,000
5,135,503

  資本金
  資本準備金
  繰越利益剰余金
92,470,000
1,228,530,000
95,940,263
資本合計 1,416,940,263
資産合計 3,806,331,918 負債資本合計 3,806,331,918
 経理関係の方なら一目瞭然でしょう。行政の方々は企業会計に慣れていませんから、内容が読みとれませんが、尋常の内容ではありません。一例を挙げるなら、流動比率です。流動資産÷流動負債=流動比率ですが、これは支払い能力を表します。

 樺テセンターパレスの場合、近い内に払わなければならない金額は3億73百万円、それに対して手持ちの資金は33百万円、つまり流動比率は8.85%しかありません。普通の会社は100%を上回っていますし、100%なければ支払いができません。データバンク時代にたくさんの決算書を扱いましたが、こんなにひどい流動比率の会社は見たことがありません。

 自転車操業と言われる会社でも、80%、90%はあるものです。それがわずかに8.85%と言うのですから、事実上倒産していると言っても過言ではありません。第3セクターで津市が筆頭株主であることを唯一の「信用」として銀行からの借金と、資金需要の時期に合わせて支払われる津市の家賃によって辛うじて生き延びているのです。

 センターパレス問題の解決についての私の考え方はこちらをどうぞ。
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