●タニコメ旅日記● |
アメリカ西部紀行 グランドキャニオンを目指して § 壮観のグランドキャニオン ウオ−ッ ! これがコロラド峡谷かぁ−。 此処はまだグランドキャニオンより何百キロか上流のデッドホースポイント。 河というものの気配すら感じさせずに突如として出現した峡谷の、はるか600mの底を流れる コロラド河を見下ろす断崖の上に立った日があった。 広漠たる大平原の只中に、ナイフを突き立て、ギリギリと深く刻み付けたようにU字状に切り立った 断崖。極端に角度を変え、恐ろしく急激なヘヤピンカーブを描きながら流れるコロラド河を眺める時、 私の胸には長い時間をかけてようやくここ迄やってきた喜びがこみあげて来たのであった。 そして更に日を重ねて、遂に夕日に染まるグランドキャニオンの断崖の上に立つ時が来た。 初めて観るこの光景は余りにも大きすぎて、しばし呆然としたのでした。 この景観をどう表現すれば良いのだろう。 私の乏しいボキャブラリーでは只々“壮観”という表現しか浮かばなかった。 標高2200mのサウスリム(南岸)に立って、はるか1600m下のコロラド河の流れを遠望しながら 13kmとも26kmとも云われる峡谷の幅とは何処と何処を指し示すのか私は見極めかねていた。 然しながら、これで私の気持が充分に満たされた訳ではなかった、少しでも良いからこの断崖を 下って行って下から天空を眺めたい。 これが今回の旅の目的であったのだから・・・・。 この願いは翌日のブライダルトレイルのハイキングで叶えられた。 1マイルポイントの手前までの往復ではやや物足りないし、立ち止まって眺める天空の拡がりも 未ださして変りはないけれど目の前に見る垂直な岩壁に、より一層この峡谷の深さを実感し、何が しかの汗と共にこの壮大な自然の中に我が身を置いたことに感動を覚えたのでありました。 § グランドキャニオンを歩きたい グランドキャニオンへ行きたい、谷底まで1600mとも2100mとも云われる断崖を降りて下から天空 を眺めたい。 今回の旅も、こんな単純な私の願望から始まったものであった。 私の旅は、いつの時もそうだけれど「神の創造物たる雄大な自然に接したい、その中に入って自分の 身体を動かしたい」。 感動は汗と共にやってくる事を私は知っている。 流す汗の量が多いほど感動も大きいということも覚えた。 感動ある旅をしたい。 これが私の旅のコンセプトだから、ただ見てまわるだけのパリも要らない、ローマも要らない、 ましてやヨーロッパの古城なんて論外なのです。 § 気にかかる私の体調だが・・・ 加齢による体力の低下は数年前から感じてはいたけれど、身動きが不自由になる程の病気の経験は なかったから、そこそこ自信がある積りであった。 ところが二年前の2008年7月、突然発病した[脊柱管狭窄症]で一時歩行も困難な状態となった。 この時はクスリと水中ウオ−キングで克服して、翌2009年3月にはエベレスト街道を歩き通した ことでこの病気は完全に回復したと思っていた。 今年五月には前立腺ガンが発見されたが、これも目下クスリで押さえ込んでいる。 さて秋にはグランドキャニオンを歩きに行こうと思っていた矢先、今年七月頃になって右脚の痺れや 股関節の痛みが出て来た。 [脊柱管狭窄症]の再発であった。 流石にこの時はショックであったが、症状は比較的軽度であったから暫くは血液循環改善のクスリ (プロレナ−ル)を呑みながらリハビリをしていた。 出発も迫った九月、回復が捗々しくない事を訴えて、森井先生のお薦めで血管拡張剤“プリンク (リプル)”のワンクール10本の注射を受けた。 これが効いて症状は大きく改善した、けれども今回も又再発の不安を抱えながらの出発であったから 念のため血管拡張剤“プロドナー”と痛み止め“パイペラック”を服用していた。 注射が効いたものと思われるが、幸い痛みも出なかったから呑みつづけていたクスリは三日目で 止めた。 一方、食事が変ったせいか、運動不足や長時間の車での移動の影響か原因は定かではないが日が経つ につれて腹部の膨満感や便通不良などが起こり、5日目からは“健王丸”と坂本先生に処方してもらっ た胃腸薬とビオフェルミンを服用しはじめた。 体調は次第に回復したが、結局これ等のクスリは帰国前日まで続けることになった。 方や脚の調子は日を追って良くなったのは嬉しいことであった。 やはり10本の注射の威力は抜群だったんだろう。 § “ヨセミテ公園・グランドサークルを歩く”の企画に参加 ガイドブックによれば「コロラド河をせき止めて出来た巨大な人口湖レイクパウエルを中心にして 半径230kmの円の中に北米を代表する8ッの国立公園や多くの国定公園がある、先住民の歴史と文化 に彩られたこの地域をグランドサークルと呼ぶ」と書いてある。 勿論グランドキャニオンもこのサークル内だ。 今回私達が参加したのは、朝日旅行の「西部アメリカ国立公園ハイキング11日間」という企画で、 コンセプトは題記の通り「・・・歩く」である。 日本の25倍もあるという広大な北米大陸にあって何故かカリフォルニア、ユタ、ネバダ、アリ ゾナ州の四隅が集まる比較的狭い地域から選んだグランドサークルの一部とヨセミテを盛り込んだもの だ。 グランドキャニオンがメインディツシュと考えている私にとってはやや“付け合せ”の多いメニュ ーと思える企画ではあったのだが・・・。 § そして次第にアメリカ西部の魅力に取り込まれて行った私であった グランドキャ二オンを歩いた日にクライマックスを迎える筈の旅ではあったけれど、この旅の全て を通じて多くの発見があり私の心にも変化があった。 ある日は荒涼とした砂漠の中に立つ奇怪な形の岩山を眺めながら、心は若き日に見た西部劇の幌馬車 とジョンウエインの世界に遊び、ある時は又この大陸の誕生と歴史を物語る地層の変化に驚き、更に 別の日には神のイタズラかと思わせる奇勝や、洞窟の光りの芸術に感嘆した。 人の生存を拒否するような炎熱の谷に入り込んだ時には改めてこの大陸の不思議を感じ、次第に アメリカ西部の魅力に取り込まれて行ったのであった。 私たち六人と添乗員、現地ガイドという個人旅行のような気安さの11日間。 3800kmを越す距離を車で移動中も、目に焼き付いた荒野の有様、サンフランシスコを発った日から ラスベガスに到った9日間、来る日も来る日も何も変らない果てしない砂漠の情景、何処までも続く 真っ直ぐな道にアメリカ西部の広大さを感じ又、毎日我が身を置いた岩山や断崖の凄さに大きさを 感じた日々であった。 そして荒野と岩の風景以外何も見えない茫洋とした世界に住む人の大らかさを感じた旅でも あった。 ありがとうジョシュ!。素晴らしいガイドでした。 懇切丁寧に案内してくれた山下さん!、いつも私たちに安心をもたらしてくれました。 そして同行の高木さん、北川さん、奥野御夫妻!、お世話になり有難うございました。 ご一緒した全ての皆様に幸多からんことを祈念します。
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