● エッセイ ● |
〔スッピンの摩周湖と湯ケムリの硫黄山〕 ![]() 目を180度反対の方向に移してみると、遠くに残雪の藻琴(モコト)山、その手前に屈斜路湖が 横に広がって湖面の中央に中島がポッカリと浮かんでいる。そのまた手前にはゴツゴツの岩肌をあらわにし モウモウと白い湯気を吐き続ける硫黄山が見える。標高700メートルからの大パノラマである。 ![]() 「たまごだよー」「おねえさん、どおー、たまごだよー」「去年から待ってたんだよー」と5個 400円の温泉卵売りが、いいかげんな声をかけている。 「ゲホッ」「ゲホッ」「くさーい、へんなにおいー」と言いながらも、子供たちは硫黄くさい湯気で 自分の姿が見え隠れするのをヨロコンで走り回っている。 足元の”温泉の水たまり”みたいなのに指先をつけてみるとけっこう熱い。ついでにその周りの土手状に なっているところを足で蹴り割ってみた。岩だと思っていたそれは、中は真黄色の全部硫黄であった。 さっきの”指先だけ温泉”は、なかなか良い加減であったので、やはりこれは全身を浸さなければ という使命感のようなものが体中を満たし始めた。考えてみると、家族6人風呂なしの三日目の昼過ぎ であった。ちょうど近くに川湯温泉があり、ここの町営の銭湯(もちろん本物の温泉)で、一人100円、 家族全員600円で「フェーー」と極楽気分となった。
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