●タニコメ旅日記●
カナディアンロッキー トレッキング紀行
 7月7日(2日目)

  − 最初に見る氷河湖キニ―レイクへ―

 朝食前の散歩では、まわりの草むらに“地リス”が愛嬌ある姿を見せて走り廻っていた。蚊が多いのには閉口するがのどかな朝だ。昨夜は停電があったりして、皆んな早寝したせいか、誰もが夜中の2時3時から眼が醒めて困ったようだが、私もその一人だった。ウインナソーセージとスクランブルエッグにガーリックバターをつけたパンの朝食を頂いた後、登山口まではシェリーのバスで移動。ロッキーへ来て初めての氷河湖を見る日だ、サンドや何やらを詰め込んだ弁当を受け取って出発。昨夜の雨も上がり、天気は曇空ながら回復基調に見えたが・・・。往復12kmとは言うものの、登山口の標高854mキニーレイクの標高985m、標高差131mだから初日の足慣らしには手頃なトレイルだ。

  ―登山客12名以内に現地ガイド一名の同行が義務つけられている―
 どこの国でもそうみたいだが、カナダにおいては外国人が国立公園内の山に入る場合は客12名以内に一人の認定登録された現地ガイドを附ける事が義務附けられている。私達一行も23名だから2名の現地ガイドを付けて、登山口からは2グループに別れての行動になった。何処へ行っても日本人ガイドがいるのには驚きもし、嬉しくもあるが今回案内してくれたのは“オクダ タマヨ”さんと“オオタ マキコ”さんという可愛い若い女性であった、内心 ―ウレシ!ハズカシ!−。

 今日からは最終日まで、山中はこの二人のガイドが案内してくれる。私達は添乗員を含めて総勢23名だが、メンバー構成は毎日変わるものの、常に2グループに別れ、尚且つ多少時間を開けて行動するから実質上11〜12名のパーテイ―と同じみたいでかえって動きやすかった、予期しない副次効果であった。  
 登山口に着いた頃から怪しげであった天気は、予報どうりに一時降り出した。用心して雨着の上着だけは着込んだが、さしたる大降りにもならず『キツネの嫁入り』みたいな降りはあったが先ず先ずの天気で一日を終えた。
  ルートは、氷河が作り出したロックフラワーを含んで灰白色になったロブソン河の激流を右に見ながら、杉や桧などの針葉樹とポプラや樺の広葉樹が混ざって鬱蒼たる深い林を抜けて行く行程だが「ロブソンブリッジ」の辺りまで登ると流れもゆったりとなり、遠くにキニ―レイクの一部らしい色合いが見えてきた。
locky
ロブソンリバーからハイキングの出発だ

   ロッキーに来て初めての氷河湖であり、湖水は特有の色をしているのだが、湖畔に着いてから眺めた湖水の色にはさしたる印象はなかった。後にして思えば、このロブソンブリッジから透かして見たキニ?レイクが一番印象的であった。
  河の流れを見ながら深い樹林帯を抜けて行く時、ふと頭をよぎるものがあった。2004年2月に歩いたニュージーランドのミルフォードトラックを何となく想い出させるシチュエーションなんだが・・・。眼にはそのように映りながら心の中では『何かが違う』と感じていた。
 何が違うのかと考えてみるのだが、強いて言えば、森の深さというのか、森の古さというのか解らないが、そんなものの違いを感覚として感じていた。 ミルフォードの雨林では『空が見えない』が、ロッキーの森では『空が見える』こんな違いかも知れない。片やミルフォードはレインフォレストと呼ばれる多雨地帯の森、片やロッキーは乾いた高地の森だ、空気の湿り具合や地表を覆う植生なんかも違って当然だが・・・。
 12:30頃キニーレイクのキャンプ場に到着、湖畔での昼食は持たせてくれたサンドイッチだった。ハムサンド、ツナサンド。ゆで卵。リンゴ。
 何かのスナック菓子みたいなもの。中味はパンであったりチョコレートのようなものであったり、毎回変わるが、何時でも何処でも必ずと言っていい位ついている、私にはとても食べきれない。ちょっと冷えて来た。 locky
キニーレイク・ハイキングの途中で

 

―圧倒される花の多さ―
 ゴゼンタチバナ、ウメガサソウ、ヤナギラン、イワギキヨウ、フーロ、インデアンペイントブラシ、ウメバチソウ、オダマキ、タカネバラ、他にも沢山の種類の花が見られたが私はそれ程花に詳しい訳でも特に興味がある訳でもない。道々いろんな花を見つけては、腰をかがめてカメラに収めながらの行進だからスピードが落ちるのも仕方ない。ある人は花にこだわり、又ある人は湖に、或いは雄大なロッキーを感じたい人など、夫々の楽しみ方をしたいと思って参加しているのだから、自分の好みを押し付けないように心がけるのもマナーの一つだ。
 可笑しかったのは、初めの頃見つけては大騒ぎした『ゴゼンタチバナ』や『チョウノスケソウ』『ヤナギラン』などだが、その内何処の道端にも群生しているのを見るようになると、途端に有りがた味が薄れて、遂に誰の口端にも登らなくなり、とうとう見向きもされなくなった事だ。  やはり『稀少』であることが絶対的な価値なんだ。 locky
初めて見たカナダの風景・ヤナギラン

 
  帰りはさして見る物のない道をサッサと歩いて15:30頃下山。ビジターセンターに立ち寄って資料を見たりしたが、私は此処の売店で『カナディアンロッキー』マークの帽子を買った。

―Mtロブソンのピークは容易には見えないのだ―
 キニ―レイクのキャンプ場を折り返して間もなくした辺りで、ホワイトホーンマウンテンの切り立った三角錐がくっきり見えたが、相変わらずMtロブソンのピークはガスの中で見えない。結局、夕方ロブソンランチに帰ってからもそのピークを見ることはなかったのは残念だが、ガイドの話でも滅多に見えないとの事だった、一日や二日居て見えないのは仕方ないかと納得した。

―ターキーのベーコン巻き―
 野趣があると言えば其れまでだが、ここのシャワーの出が悪いのには閉口した。“ロッキーさん”の話では、川水を引き込んでいるのだが、あの、肌がツルツルになるというロックフラワーが沈降してパイプを詰まらせるのだとのことだった。そんなシャワーを浴びた後、夕食にはさっきから良い香りを振りまいていたターキー(七面鳥)のベーコン巻きが出た。私は例によってビール、明子はビールの後アイスワインを戴いた。この貴腐ワインの香りと濃さ甘さに明子サンは感心シキリであった。
 夕食後は“ビーバーポンド”の辺りまで散歩したが、纏わりつく蚊に追い返されて早々に引き上げた。明子さんは疲れたようで、明日の準備もそこそこに、外が薄暗くなった10時前にベッドにもぐり込んだ。確かに初日の慣らし運転にしては、高度差131mとはいうものの往復12kmは彼女にはややハードであったのかも知れない。明日は逆に距離は短いが、急な登りと寒さが厳しいと言われるザ・ウイスラー登頂とアサバスカ氷河が待っている。  
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