●タニコメ旅日記●
カナディアンロッキー トレッキング紀行
 7月9日(4日目)

― ウイルコックスメドウへ、向かいの山から氷河を眺めた後は氷河湖巡りを経てレイクルイ―ズへ −
 “メドウ”って何?。『開けた所というような意味』とガイドのオクダさん。だけど、見た事も無い者にはイメージも沸かない。今日行くのは、ウイルコックスパス(峠)だが、峠の付近は広大な平原状になっていて凡そ峠らしくない、しかし紛れも無く分水嶺であり、原っぱのよう な峠の事を言っているのだということは、現場に行ってみて初めて理解できた。
 昨日の様子からは想像出来なかったが、今日は朝から雨だ、レインウエア上下を着て、登山口までバスでほんの数分。
 9:30頃、降り続く小雨の中を幾分重い気分で登りはじめた。登山口から暫くは、薄暗い森林地帯が続く。気分が重い上に、ここら辺は特に『蚊』が多い、大きいヤツが群がって襲ってくるのには参った。
 手や首筋やらにヤタラ虫除けを塗ってもらってひと心地ついたが、何となく気乗りしないスタートであった。このウイルコックスパス(峠)へのトレイルは、登山口の標高が2040m、峠の標高が2375mと高地であるだけでは無く、“メドウ”と特別に呼ばれるだけあって広大な平原地帯には高山植物の宝庫のように沢山の花が咲き、マーモットが顔を出し、幾分丘陵地になった辺りは大きく巻いた角を持つビッグホーンシープの生息地になっている。
 かなり向こうの丘の上で、大きく巻いた角を持った動物が草を食んだりこっちを観たりしている様子なんかは日本では到底見かけられない風景だ。  この一帯は国立公園の中でも政府による特別な保護地域になっているとのことで、私達のパーテイ―には二名の現地ガイドが付いている上に更に二名のカナダ人ガイドが付いた。

 道々変わった花の説明を聞きながら、特に女性陣はその都度写真に収めていた。急勾配を登り切った辺りが森林限界であり、登りもやや緩やかになった。  この辺りからは花の種類にもやや変化があり、昨日キニーレイクトレイルで見たような花から、より高山植物らしい背の低い花が多くなった。  私は何時ものように、花と見れば何でも写真に収めるという程の花好きでもないし、ましてや『ルーペ』を持って探して廻らなければ見つけられないような小さな花なんかには興味は無い。
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ロッキーの山並み

   しかし、登るにつれ、初めはポツポツと見えていた『イワヒゲ』らしいものが次第に『アオノツガザクラ』にかわり、ついに峠近くでは群落をなして咲いているのには眼を奪われた。こういう場面を何度も何度も繰り返しながら登りきったウイルコックス峠の付近は、確かに『峠』という名前とは違ってノッペリした開けた場所であり、言葉の意味が理解出来た。今回のトレッキングで一番の335mの標高差を登った日であった。
 確かにこのトレイルに咲く花々は見応えがあったが、そもそも今日ウイルコックスパスへ登る目的は他にもあったのだ。昨日降り立った氷河を、今日は向かい側の山の高いところから眺めようというトレッキングであったのだ。
 ややハードな登りであったが、このコースでは高度を上げるに従って予想外に大きく眺望が変わって来た。先ず、足元の山と向かいの山の間にある巨大なU字谷に眼を奪われる、一億年か一億五千万年前か年代は定かではないが、削り取られて出来た壮大なU字谷は太古の年代の氷河の大きさを感じさせるのに充分だ。 更に高度を上げると、先に『サスカチワン氷河』が見え、次いで昨日降り立った『アサバスカ氷河』の一部が見えて来た。コロンビア大氷原のドームと呼ばれる氷か雪の堆積も昨日氷河に立って見たよりも一層奥行きがあるように眺められた。
 コロンビア大氷原に源を発した六個とも七個とも云われる氷河の流出水は大河となって最終的には三つの海、即ち太平洋、大西洋、北極海に流れ込んでいるのだという。因みに今見えている『サスカチワン氷河』の水は太平洋に流れ込むのだそうだ。
 この広大なカナダの国土において、尚且つ流れ出た氷河の水が三つの海に流れ込むという話を聞き、地図を見せられるにつけても『コロンビア大氷原』の想像を絶する大きさが感じられた.。
 峠に着いた頃には雨も小止みになったが、代わって風が強くなりかなり寒くなって来た。とても此処で昼食をとるような状況ではなかったから、小休止の後下山を開始。山の天気は変わりやすく、少し下がってきた頃には雨もスッカリ上がり青空も見えて来た。
降りは快調に。
“かーぜーはー なごみーてー 日は暖かしー
   氷河のーほとーりを・・・・“
なんて唄いながら降ってきた。

 13:30頃、登山口まで戻った頃には陽光も戻り、汗ばむ陽気になっていた。バスは一旦シャレ―に立ち寄ってトイレ休憩の後、サンドイッチの昼食を食べながら午後の気楽な湖水巡りに移って行った。
― 湖水めぐりの午後ー
 シェリーのバスは標高2000mのアイスフィールド シャレ―から、暫くはサスカチワン河(間違い、正しくはアサバスカ河だろう)に沿って一気に降って行った。走っている道路は勿論R−93氷河ハイウエーだ。
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チャーミングなドライバーのシェリー

   奇岩や重畳たる岩山の風景から、高度を下げるに連れて次第に、目の高さではポプラや松の森林地帯になって来た。バスは更に南下を続けるが、道は再び登りになりやがて2069mのボウ峠の登りを登りきった所で右に折れると直ぐに『ペイト・レイク』だ。かなり高い位置から見下ろす湖面は鮮やかなミルキーブルーに輝いて見えた。
 たて長の湖水は、嘗てニュージーランドで何度も見たプカキ湖やテカポ湖のそれよりも一層濃いミルキーブルーに見えたが、好天の日曜日の観光地はどこの国でも同様で、人、人、々であった。早々に退散。
 この辺りはまさに氷河湖オンパレードだ、ほんの暫く走れば早や『ボウレイク』だ。やはりミルキーブルーの湖水は変わらないが、色の濃淡は湖水の深さと見る高さ、言わば入射角の違いによるもののようだ。
 ここでは湖面とほぼ同じ高さから見るため、先ほどのペイト・レイクよりは色は薄く感じる。水源は勿論ボウ氷河だ、流れ出る川もボウ河だが、この河はバンフの街外れを流れていたのを後日知った。
 唯少し驚きなのは、今は満々と湖水を湛え岸辺には花々が咲いていて別段変わったところが無いように見えるが、この氷河湖は高い標高のせいでロッキー山脈の中でも最も遅い6月にようやく凍結した氷が溶けるのだという。つまり、ついこの間氷が溶けたばかりの湖面を見ているわけだ。更に、このボウレイクのすぐ下の方にはクロウフット氷河(からすの足の形)がありボウレイクの出口辺りに流れ込んでいるようだった。
 16時頃、かんかん照りの暑さの下、ボウレイクを後にした。ボウ峠の登りがキツかった分、道は今度はドンドン下って行った。道の両側は松や杉らしい針葉樹の深い森、R−93の気持良い道をシェリーのバスはレイクルイ―ズに向かって快調に走り下って行った。
 下り切った頃、バスは一旦R−93と別れトランスカナダハイウエー(カナダ大陸横断道路―8000kmのカナダ最長ロード)と云われるR−1に入った。 マクドナルド氷河を見ながら4kmばかり走ると『レイクルイ―ズ』に着いた。
 ビクトリア女王の四番目の娘ルイ―ズキャロラインに因んだ名前の有名な湖らしい。一段と鮮やかなミルキーブルーの湖面にビクトリア氷河の影が映える様は感動的で、レイクルイ―ズはロッキーの宝石といわれる」とガイドブックには書いてあるが、湖畔にはシャトーレイクルイ―ズというホテルを配して標高で1700mに位置する人気観光スポットらしい。
 当然観光客の数も多く混雑していたが、何よりも気分が悪いのは、映画で見る“キョンシー”みたいなイデタチをした某国人らしい人達がうろうろしているのを見せ付けられると、本当のところは判らないが、何で又殊更にこんな格好をして人前に現れるのかと訝しく思って不愉快な気分になり、早々にバスに引き上げた。
 ここからは、今夜の宿 『LAKE LOUISE INN』があるレイクルイ―ズ村まではほんのひとっ走りであった。

― 久しぶりの人里 −
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ナイトキャップが買えて満足の二人

   四日ぶりに人里へ出てきて、今夜の宿はレイクルイ―ズ村にあるホテル『レイク・ルイ―ズ・イン』だ。R?−3209の部屋のキーを貰うや、すぐに何もかも放り出して『酒類』を買いに走った。ここは“村”とはいうもののショッピングモールもあるとの話であったからだ。
 「カナダでは屋外での飲酒は法律で禁じられている」。何も屋外で酒を飲もうとは思わないが、こちらに来てからお酒の類を手に入れるのに結構苦労する。 ワインのハーフボトルやウイスキーのミニボトルを買って、これでようやく落ち着いた、ホテルも明日バンフへ移動すれば後は三連泊だから、もうナイトキャップの心配をすることは無い。

― レイク・ルイ―ズ・ イン ―
 昨晩の、シャレ―と呼ばれる宿でもそうであったが、今日はインと呼ばれる宿ながら、やはりメゾネットタイプだ。入ってすぐ左側に子供部屋らしいシングルベッドと2段ベッドがある。
 ロフトはダブルベッドとシングルベッド、これだけかと思っていたら一階リビングの壁にダブルベッドが嵌めこんである、これを倒せば又二人分。  この部屋では都合8人が寝られるようになっている。おまけに一階にはキッチンや冷蔵庫、バス、トイレ。ロフトにもシャワーとトイレ。
 どうやら大勢の家族が泊まって自炊でもしながら、ここを基地にしてあちこちへ遊びに行くような作りになっているようだ。だけど僕達は二人だけ、好きなところへ寝よう。
  夕食は、先ずはビールで乾杯。
 カリフラワーのポタージュスープ。ライス型したパスタとグリーンアスパラの上に載せた舌平目のムニエル。ケーキとコーヒー。  グリーンアスパラの根元の方が、やけに硬かったが大陸の人は、そんな『シヨウモナイ』ことにこだわらないという事でご愛嬌か?。
 ナイトキャップは、私はウイスキーの水割りで、明子は赤ワインでという積りであった。赤ワインは“なかなかイケルぜ”、ちょっと毒見。  さてウイスキーの水割りと思って、大層な箱入りになったビンのヤツを注いでみたが、?〇×△・・・やたら甘いよ!カクテルになってるんや!。  こらアカンわ!甘すぎてアカンわ! お前さん これ飲んで!。
 結局ワインを横取り、これの方がよっぽど美味いわ!。以前にもこんな経験したのを思い出した。あれは多分クインズタウン(NZ)だったかと思うが、冷蔵庫に用意されていたのをウイスキーと思い込んで、明子さんが水割りをつくってくれたが、一口飲んで、『何じゃコレハ!』という味であった。
 よく読んでみると、ウイスキーを何%やらにコーラ割したものであった、だから私が飲んだのは、その『コーラ割の水割り』であったのだ。外国で、こういう小さいビンに入っているものは、よく気を付けなければイケナイと思い知らされた夜でした。
 只今23:10、遅くなった。明日はエメラルドベイズン迄の登りがあるのだ。
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