●タニコメ旅日記● |
―― マッキノン峠を越えて ―― ポンポローナロッジは、夜半までの雨も上がって快晴の朝を迎えた。ラッキー!。今日はこのトランピングのハイライト、1154mのマッキノンパスを越える、結構ハードな一日なので、朝起きての快晴に心も軽い。今日は、「KOROMIKO」で買ったキウイスタイルの「PP下着の上に短パン」スタイルで歩いて見ようかと思って、昨夜デイナーの時にテストして見たが色々と不都合な点が発見された。 最大の不都合は、小便時パンツもレインウエアーのパンツも全ておろさないと出来ない事だ。そんな事で、やはりこれを止め、昨日と同じニッカ−ボッカスタイルにした、結局このトランピング中はこのスタイルで通すことになった。 6:00起床、例によって昼食のサンドウィッチつくり。朝食では、多分生まれて初めてシリアル(何かのカリカリに牛乳をかけて) を食べた。朝食も結構立派なものが出る、今日はスクランブルエッグ/ベーコン/蒸しトマト、パンも割合美味しく日本人にも良く合う。 昨夏のスイスのパンとはエライ違いだ!。 8:00ポンポローナロッジ出発、11マイル地点から20マイル地点のクインテインロッジ迄だから距離は短いが峠越えの難所だから、気合を入れて行こう。ミンタロ湖手前までは、クリントン谷の両側は切り立った斜面の連続で、名前は知らないが沢山のフォールが見られ、しばし眺め入ったり写真をとったりしていた。 ![]() 次第に雲行きが怪しくなり、9:30頃マッキノンパスに向かってのダラダラ登りになった辺りでは遂に本当の雨になった。たまらずにレインウエアー上下を着込んだが、これが結構暑いのでイヤなのだ!。雨といっても、昨日と同じで降り続く訳ではなく降ったり止んだりや、キツネの嫁入りモドキが昼過ぎまで続いた。ジグザグ道に入る手前でレインウエアーの下は脱ぎ、その後は一日中そのままだった。 さて、ようやく問題の11回のジグザグに入る。二つ目のところが崖崩れのため本来の道は通れず、テンポラリーな道を登ったが、これが又MEIKOなんかには難儀なところで、殆ど直登ルートだった。しかし、これはかえって近道なっており、抜けるとイキナリ三つ目のジグザグに入っていたのは嬉しかった。 前半の片道は長い。それもその筈、標高410mのPompolona LodgeからMintaro Hut迄のダラダラ登りを過ぎるとイキナリ、Mackinnon Passまで一気に500mばかりの高度差を稼ぐ訳だから大変だ。殆ど“壁”に近い急斜面を喘ぎながら登ると、6回目辺りで森林限界を越え高度を上げるにつれて片道の距離は次第に短くなり、ようやく登りも緩くなった所がマッキノンパスであった。 頂上直下のあたりには、エミリーに教わった「ヒービー」の花が可憐に咲いていた、私は教えられた通りにこの花が唯一のヒービーだと思っていたので、後日Mtクックで、この花は「ヒービー」とガイドが別物と思われる花を指指した時には ? と思ったが、NZにはヒービー科の植物が90種も生存すると聞いて納得した。 峠の頂上には、このルートを開拓したQuintin Mackinnonを記念したケルンが建てられていた。一口に峠越えとは言うものの、パスの頂上から見たクリントン谷とアーサー谷を隔てる山は、東側(東海)と西側(西の海、タスマン海)を隔てる“壁”のように、その両側を削ぎ落としていた。 この峠越えで、私達も東海側から西のタスマン海側へ達することになるが苦労して登ってきた分感慨も一入であった。この頃は幸い雨も止んでいたので、メモリアルをバックに何枚も写真をとった。 ここで、先に来て待ち構えてくれていたガイドの「ベン」に暖かいスープの接待を受け、思わず私達は、アーサー谷に向かって。 “雪はー消―えーねどー 春はきざしぬー かーぜーはーなーごみーてー“ と大声で「エーデルワイスの歌」を歌った。MEIKOも10年来の夢が叶って感激したようで思わず時を過ごした。 12:30ごろ、ここから尾根伝いに少しアップダウンした所のマッキノンパスハットに着いた。小屋の手前で直子さんに“これこれ!”と指をさされて見た、何とも不思議な植物、一瞬 苔 の仲間か?と思ったが、そうではなくて「ベジタブル シープ」というキク科の植物デシタ。 このサマ(様)は、「見た者にしか判らない」という感じの、何とも表現し難い形状であったが、この厳しい自然環境の下で生き抜くために、我が姿を変えるたくましさを見、「思えば叶う」という遺伝子の不思議を思った。 ![]() 小屋で一息つき、クリスやエミリーが作ってくれた暖かいスープとコーヒーでサンドウイッチの昼食をいただいた。 “世界一美しい風景の見えるトイレ”。小屋横の一人用のトイレには四角い窓が開いており、ここから見る、今朝出発したポンポローナロッジやミンタロ湖を抱えたクリントン谷の景色は最高だ!。そんなことからこのトイレは、世界一美しい風景の見えるトイレと呼ばれているそうだ。 13:15頃、相変わらずのキツネの嫁入りのような天気の中を、今度は恐ろしく急な斜面のゴロゴロ石の道をアーサー谷に向かって一気に降りて行く。MEIKOさんは疲れた!。 “壁”を降りきり、アーサー川の岸辺を今夜の宿クインテインロッジ(Quintin Lodge 250m)を目指して尚も下り続けている内、一時の見晴らしの良いガレ場から森林地帯に入って、サザーランド滝の上部が見えるところ迄来た18マイル地点辺りから、MEIKOの脚は重くなってきた。長い降りでヒザの負担が大きくなり疲労がたまって来たようだ。 おまけに、この辺りから20マイル地点のロッジ迄は岩場の道や木道の階段が多く、行けども行けども20マイル地点は来なかった。 “こんな時エミリーに聞きました”MEIKO “後どのくらい?” エミリー “ワンナワ−” エーッ! まだそんなにあるの!?、10分か20分と思ったのにー、ガックシ!! 。ヘトヘトになりながら、やっとの思いで20マイルのクインテインロッジに辿り着いたのは16:30であった。 気にして出迎えてくれた直子さんや、ロッジのおばさんと抱き合って涙をながしたのでした。とにかく よう頑張った、えらかったえらかった!。 サザーランド滝。 MEIKOは当然ロッジで休養。すぐさま私は一人で、片道40分の道をサザーランド滝へ。 世界で五番目、NZで一番といわれるだけあって、落差580mの大滝は水量も多く、小説なんかでよく表現されるような「ゴーゴーたる水音」というより、もっと激しく「バリバリッ!」という、雷の連続音のような音をたてて流れ落ちていた。滝壷付近、といってもやや離れた岸辺みたいな所に立っていても猛烈な水煙で、レインウエアーを着て見てはいるものの全身ズブ濡れ、とてもカメラを長らく構えていられる状態ではなかった。 丁度フィルムも無くなったので早々に引き上げ、17:50頃ロッジに帰った。MEIKOは小一時間の仮眠で大分元気を取り戻した。 デイナーは豪華なビーフステーキを戴いた。グレイドハウス、ポンポローナと云い今日のクインテインロッジのステーキデイナーと云い、食事はとても満足の行くものであった。街中の下手なレストランより上等ではないか!?の感さえする。10:00PMにはキッチリ自家発電が止まり、自動消灯となるが陽が長いので、暮れたら間もなく寝るというのは結構気ぜわしい。 |
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