●タニコメ旅日記● |
―― アーサー谷を下る ―― クインテインロッジの朝も素晴らしい天気の下で迎えた。昨日のポンポローナでの寒さに懲りて、夕べは始めから予備毛布を重ねて おいたので、暖かく気持ち良く眠った。例によって弁当つくり、朝食とやや気ぜわしく過ごして7:45分ロッジ出発。今日は、此処20マイルのロッジから33,5マイル地点の船着場まで13,5マイル(22km)の長丁場だ。 おまけに、船は15:15と16:00しか無い。先の船に乗るべくかなりハイピッチのウオ−キングになる。アーサー川に沿って、道は下りだが石の多い所や岩場、ちょっとしたアップダウンもあり思うようには進まない。それでも目一杯ふんばりながら、途中でサザーランド滝を遠望し、木雪崩の跡を横切り、マッカイ滝やベルロックにも立ち寄って自然の不思議を感じつつ足早に下って行った。 ![]() 天気が良いせいか小鳥たちの姿も多く見られ、その都度立ち止まっては眺め写真に収めた。ここアーサー谷は、昨日までのクリントン谷の風景とは特徴的な違いが見てとれる。 鬱蒼とした古木の森は同じだが、この谷に入ってから3日までは見られなかったシダの巨木(ツリーファーン)が現れたことで普段私達が住む世界とは一層隔絶された雰囲気が醸し出されて、何とも云えない良い気分だ。 まさに「ジュラシックパーク」の風景そのままに、高いものは10m前後にも達すると思われるシダの木が生い茂り、苔むした太古の巨木の森の中を歩いていると、突然、シダの木を踏み分けて“テイラノサウルス”かどうか判らないが、ジュラ紀の恐竜がノッソリと現れて来そうな錯覚に襲われる。 ![]() エイダ湖を右に見ながら、このルートの開拓が難事業であった事を思わせるロックカッテイングを過ぎて暫く進むと、ようやく30マイル地点のジャイアントゲート滝に着いた。28マイルを過ぎてからヤケに道が遠いな!と思っていたら、いきなり30マイル迄来ていた。29マイルのマイルストーンを見落としていたようだ。 ![]() 13:00滝下の岩場でウジャウジャ寄って来るサンドフライに悩まされながらの昼食を戴いたが、15:15迄には33,5マイルのサンドフライポイントに着かなければならないと気は急くし、サンドフライの猛攻に合うしで追い立てられるように早々に出発した。 直子さん達が食事しているポイントとは20mも離れていないのに、彼女達は“サンドフライなんか居ませんよ”というような平気な顔をしている。どうも座るポイントを間違えたようだな!!。 後はマイルストーンを見つけるのが楽しみみたいに、ひたすら歩いて14:20ごろ、33マイルのストーンを見つけた時には、正直ホット!した。ここ迄来ればもー余裕だ!。今日のMEIKOさんは快調だ、距離が長かった割にはドンドン飛ばしてきた、ともすれば私の方が引きずられるような按配だった。 残り0,5マイルを惜しむように歩いていた、この時私はフィニッシュに備えてフィルムを交換しておこうとしてちょっと立ち止まったが、その間にもMEIKOはドンドン歩を進めて行くのに腹を立てていた。記念すべき33,5マイル地点には二人で手を携えてゴールしたいと思っていたのに、そんな私の気持ちも判らないのが気に入らなかった。 何て人の情が判らんヤツだ!とブツブツ云いながらフィニッシュした。それでも、とうとう33,5マイル(54km)のミルフォードトラックを走破したのだ!!という感慨に浸りながら。 “SANDFLY POINT MILFORD TRACK 33,5 MILES“ という標識をバックに写真に収まった。 ![]() 標識には、苦難の行程を物語るように無残に裏がはがれてしまった沢山の山靴がぶらさげられていた。待合小屋で「クリス」がつくった熱いコーヒーを戴きながら、少しの時間待った後15:15発の船で、昨年の思い出のアルバムをめくるようにミルフォードサウンドの桟橋に降り立った。 今夜はトラック最後の宿マイターピークロッジ(Miter Peak Lodge)で“完歩証”の授与式がある。 シャワーを浴びて一心地ついた後、思い思いにビールやワインを飲みながら今日の行程はハードであった事や、お互いよく頑張ったと健闘を称えあいながら暫し賑やかに歓談した。 18:15からは「完歩証」を頂く儀式に参加した。 一人づつ名前を呼ばれ、ミルフォードトラック54kmを歩き切ったことを証明するる、“CERTIFICATE OF ACHIEVEMENT”をもらった。 式後はレストランに席を移してNo102チームとしては最後のデイナーを楽しんだ、今夜は骨付きラム肉のハーブステーキを美味しく戴いた。 さすがに長い一日であったが、皆念願のミルフォードを歩き切った事で満足感一杯であり、日本人/外国人の区別なくゲームをしたり歓談したりして過ごした。今夜は事実上Milford Trackの最後の夜だ、無事歩き終えた安心感も手伝って、皆よく飲んだ。 明日は、ご褒美のミルフォードサウンド クルーズを楽しんだ後、全員バスでクイーンズタウンに移動して、このコースは完了する予定だ。天気も良かったし、MEIKOさんも今日は快調に飛ばしてよく頑張った、エラカッタようー!!。 このトランピングで感じたこと。 40年前私は山男であった。 けれども私達の、特に“岩嶺会”のような登攀中心の山行は通常、ベースキャンプ設営/アタックというラッシュアタックのやり方であって、いわゆる「縦走」の経験は殆ど無い。 長時間歩くのは、重いリュックを背負ってベースキャンプを設営するまでのアプロ−チの場面だけで、当然歩行スピードも遅い。そんな私だが、今回のトランピングは距離は結構長いとはいえ、岩登りをする訳でも無いし....とタカをくくっていた。 むしろ「明子の体力」が持つかどうかが最も気懸かりであった、ところが実際歩いてみて、パーテイ−の皆様の健脚ぶりというか、歩行スピードの速さには驚いた。このスピードには一寸ついて行けないな、というのが実感だ。 |
![]() [前頁へ] |
![]() [メニューへ] |
![]() [次頁へ] |