● エッセイ ● |
〔馬づらにへばりつく〕 北海道南岸の門別町から襟裳岬にかけての国道235号線、336号線は右側に太平洋を臨みながら の絶好のドライブロードである。そして、よく目につくのが競走馬の牧場で、それぞれの牧場ごとに 産出したサラブレッドたちの名前が大きな看板に書かれて道路わきに立っている。 途中のとある牧場で車を止めると動物好きの子供らは、たちまち牧場の柵によじ登った。馬も 人なつっこいのか、めったに人が来ないので人恋しいのか、すぐさま5、6頭がすり寄ってきた。 子供達は、はじめは近づいてきた馬の大きさに若干ひるんで、せいぜい長い顔の鼻のところをなでたり していた。そのうち、敵が従順でとてもやさしいということが分かったのか、段々大胆になり、鼻なで から首なで、胴なでになり、とうとう剛が顔の部分にへばりついてしまった。馬のほうもまんざら 悪い気がしないのか、それとも『まあ子供のことだから』許しているのか、へばりつかれたままじっと している。子供の心臓の鼓動を鼻で感じ、純粋な生き物同志の友情を交わしているのかもしれない。 人間同士のしがらみや葛藤でうすよごれた大人にできる芸当ではない。子供が動物を飼いたがる気持ちは、 過去に、あひる、牛、にわとり、猫、犬と飼ってきた、というより”友達や労力”として生活の一部であった 私にはよく分かるのだが、転勤族の家族には動物の友達を持つことは非常に難しいことなのである。
〔穂別町で初日泊〕 |
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