● エッセイ ● |
〔遊びまくる子供たち〕 駐車場は、その管理棟の横にアスファルト張りの大きなものがあった。そこには先客が20台ほど すでに車を止めて、それぞれリヤカーに資材を積んで小川の橋を渡った先の芝生のキャンプ場にテント を張っていた。屋根のついた炊事場からは、夕食のメシを炊く煙が何ヶ所からも上がっていた。 我々は、その駐車場の上手に、アスファルトの張っていない、駐車場と言うより広場といったところ を見つけ、その隅っこに今日の宿を決めた。白樺林の中をサヌシュベツ川の清流がうねるように流れ、 自然を残しながら人間が居心地いいようにちょっと手を加えた、というような理想的な景観である。 子供達はさっそく、その川に渡してある吊り橋を走って渡り、広いキャンプ場の芝生を横切り、 山の傾斜に作ってあるフィールドアスレチックの第一関門の『池渡り綱』に取りついた。 『池渡り綱』は幅2メートル長さ10メートルほどの網を、池の上に縦にかけてあり、その網目に 足をかけロープを握り池を渡ってしまうというものだ。ちょうどその網の中ほどに小島があり、そこで 池の中を覗くと小さな鮒がいた。「おとうさーん、カエルの卵だあ!」と徹くんが叫んだ。よく見ると その池全体にヌルヌルブツブツのカエルの卵が漂っている。小さい頃、和歌山の田舎で田んぼの中の カエルの卵をイジクッって遊んでいるうちにヌルヌルブツブツが気持ち悪くなってゲロを吐いたことを 思い出してしまった。 フィールドアスレチックは全部で10個くらいのワナというかシカケがあって、途中には木によじ登って いちばん高いところにぶらさげてある鐘を鳴らすやつには『使用禁止』の紙が貼ってあった。なるほど 鐘の胴体があるが、真中にぶら下がっているはずの玉がなくなっていた。 次ぎは地面にポッカリあいた穴に入って行き、底まで行くと横に移動して無事に外界に出られるという 斜面でこそできる『おっ、なかなかやるではないか』というシカケであった。最後は平地に木のバーが 高低10個くらい作られていて、それをピョンピョンと飛び越えて行くもので、そこを終わるともうスタート 地点に戻っていた。 私は『キャンプ場の施設は一切使いませーん』と管理人に宣言した言葉を思い出しながら、ワガモノ 顔で遊びまくっている子供達に心から拍手を贈っていた。
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