● エッセイ ●
春まだ浅き道東の宝捜し旅?

 〔平取(ピラトリ)アイヌコタン〕
 翌日は5時ごろ目が覚めた。山の朝はいつもすがすがしい。5月といっても北海道では春も初め、 サヌシュベツ川の清流は氷水のように冷たい。この川の水で顔を洗いウガイをする。うまい味噌汁の 朝食をすませ平取町アイヌコタンに着いたのは午前8時であった。観光客相手のアイヌの店が、国道 沿いに連なっている。私はアイヌ文化資料館側の『ポロシリ観光』という大きな看板のかかった店の 前で車を止めた。「まあ寄っていってよ」と店のおばさんが親しく声をかけてくれた。子供達はパラ パラと車を降り、店頭に置いた熊の剥製をなでまわし始めた。
 おばさんは何か朝食の続きを口に入れて、モゴモゴさせながら店頭のマタンブシ(アイヌのハチマキ) を取って優の頭に着けてやった。続いて将と剛にも着けてくれた。私がビデオを撮っているので、いつも 観光客にそうやってしているサービスなのであろう。そして最後に妻にもマタンブシを巻いたあと アッシ(アイヌの上衣)まで着せてしまった。なかなか似合うので「おっ、似合ってるね」と言って しまった。
アイヌ  このおばさんの孫といった男の子がひとり遊んでいた。まゆ毛が濃く両方がつながっているように 見えた。小学校3年生くらいであろうか。子供たちの写真を撮るときに「いっしょにとろうよ」と誘ったが、 恥ずかしそうに拒んだ。そのへんのしぐさは徹くんによく似ていた。
 この村には、今度参議院戦に出馬する萱野茂氏の家もある。『二風谷(ニプタニ)に生きて』の 著者であり、北海道地名研究者、山田秀三の永年の協力者でもある。今一度じっくりと訪れたい土地 である。  

(次のページへ)

backボタンの画像
[前頁へ]
topボタンの画像
[メニューへ]
nextボタンの画像
[次頁へ]