● エッセイ ● |
〔日高幌別(ホロベツ)川口でのブタ汁〕 ヒルメシは浦河町から5キロほど先の、日高幌別川の川口でとることになった。アイヌ語のホロは 大きい、ベツは川のことである。確かに大きな川の川口には、ウミネコの親子が群れをなして遊んでいた。 物知りの徹くんが「あの白と黒がはっきりしているのが親鳥で、茶色っぽいのが赤ちゃんだ」と言った。 いつのまにこんなことを知ったのか驚いたが、赤ちゃんといっても大きさは成鳥と大してかわりはなかった。 「飛ぶ練習をしているんだ」とまたしても徹くんが言った。 茶色い大きな赤ちゃん鳥が飛んだ。なんとなく羽のはばたきもぎこちない。風に逆らって川口から 波打ち際のほうへ30メートルほど飛んで、ヨタヨタと落ちるように海岸に降りた。 ヒルメシは予定通りブタ汁である。カセットボンベのコンロを2つ用意して、一方でメシを炊き もう一方でブタ汁になるべくお湯が沸いている。ブタ汁用のブタ肉は出発前に”カウボーイ”で買った もので、肉厚3ミリか5ミリかで妻と言い合った末「やはり本格的なブタ汁には5ミリは必要だ」と、 なかば強引に決めたものであった。 ![]() 子供達はさっきまで砂浜でハダシになって遊んでいたが、姿が見えなくなっていた。『どこへいったの だろう』と、海辺の方を見たがここにもいない。海沿いにずっと遠くに目をやると、ほとんど点のような 物体が4個、うごめいているのが見えた。めずらしいことにここは国道より海側であるが、海岸までの 間が牧場になっているのだ。4個の”点”は、かいがいしく草をむしっては柵によじ登り、その中の 馬に与えているのが分かった。「おーい、メシだぞー」。私は大声で叫ぶと、4個の物体は砂浜をコロビツ マロビツこちらに向かって駆けて来るのが見えた。
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