おもちゃドクター入門講座 導入偏
第7章 接着による治療

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7−1 接着剤の種類と特徴
使いやすく安全な
水性形接着剤
合成樹脂を水に混ぜ合わせた接着剤。
◎水性で使いやすく人に対して安全性高い。
◎手や服についても乾く前なら水で洗い落とせる。
◎固まるとほぼ透明になる。
×固まるまでに時間がかかる。
用途が広い
成ゴム系、溶剤形接着剤
合成ゴムなどを揮発性の液体(溶剤)で溶かした接着剤。
◎利用範囲が広く、多くの材料に使える。
◎固まるまで長時間押さえる必要がない。(ゴム系)
◎接着層が比較的柔らかく、衝撃を受けてもはがれにくい。
×有機溶剤を含み、吸うと体に悪い。
急ぎの接着なら
間接着剤
わずかな水分と反応して、すばやく固まる接着剤
◎数秒から数分で接着できる。
×指と指などを瞬間的に接着するため注意が必要。
×衣類に大量につくと発熱してヤケドをしやすい。
×衝撃などの力には弱い。
水や熱にも強い
エポキシ樹脂系接着剤
A剤とB剤を混ぜると化学反応をおこして固まる。
 固まるスピード別に1分型、5分型、30分型などの種類がある。
◎接着強度が非常に大きい。
◎金属・ガラス・陶磁器・木材など硬い材料に適する。
◎水・熱・寒さ・化学薬品に強い。
◎充てん材としても使える。
×一定の時間内に作業を終える必要がある。
×プラスチック類には適さない。
ひび割れ・スキ間を埋める
充てん材
歯磨き状やねんど状のモノがあり、シーリング材とも呼ぶ。
◎固まるとゴムのように弾力があり、衝撃に強く、すき間の動きにも追従する。(シリコーン系、変成シリコーン系のもの)
◎水、熱、寒さ、化学薬品、紫外線などに強い。(シリコーン系)
×用途に応じて使い分けが必要。
水、熱、ショックに強い
弾性接着剤
用途が広く、高機能、弾力性を持っている ◎熱・水・ショックに強い。
◎凹凸面の接着もOK。
◎幅広い材料に対応。
×湿気で硬化するので、湿気を通さない素材同士は不適。

紫外線硬化接着剤
紫外線硬化性樹脂を使用した接着剤。
エポキシ系樹脂を用いた接着剤が主に市販されている。
◎紫外線を当てないと硬化しないので、ゆっくりと結合状態を確認しながら作業できる。
◎紫外線を照射すると、数秒で硬化する。
◎紫外線照射は小型のLEDランプで簡単に行える。
×紫外線が透過できる厚みは小さいので、厚みのある接着の場合は、薄い接着を数回重ねる必要がある。
〇接着力は落ちるが、手芸用UVレジン液で代用できる。


7−2 その他の接着方法
ぬいぐるみの補修には
ホットメルト接着剤
(ホットボンドとも言う)
プラスチックを含む広範囲な材質に接着が可能。
熱可塑性樹脂を主成分とした有機溶剤を全く含まない100%固形分の接着剤で、常温では固形または半固形。
 加熱溶融して塗布し、冷却により固化し短時間で接着が完了。
 グルーガンは、スティック状のホットメルト接着剤を溶かして接着する道具。
接着剤を用いない
溶着
圧着こて以外は、装置が大きい
溶着は、プラスチック境界面に熱を発生させ、瞬時にプラスチック部品を溶着させる溶着技術。
熱可塑性プラスチックの接着。
熱板溶着・振動溶着・超音波溶着・レーザー溶着等がある。
簡単接着に
両面接着テープ
多くの種類が市販されている。
用途に応じて使い分ける。
金属どうしの接着に
ハンダ付け
銅線・鉄板の接着。
電気配線・プリント配線には必須である。
ハンダごてが必要。
補修に活用
機械的結合
接着の補強に利用可能
ビス・ボルトによる締め付け。
針金による締め付け。
ダボ(ピン)による貼り合わせ。

7−3 接着による治療方法

(1) 作業に必要な道具
  1) 紙ヤスリ 「接着前の下地処理と、充てん補修後の表面仕上げに使用。
  2) 塗料うすめ液・アルコール 「接着する面についている油や離型剤の落としに使用。
  3) ゴム手袋 「エポキシ樹脂系接着剤やシーリング材は皮膚につくとかぶれることがあるので、必ずゴム手袋やポリエチレン手袋をつけて作業をしましょう。
  4) マスキングテープ 「補修部のまわりに貼って、充てん材のはみ出し汚れを防ぐ。
  5) ヘラ 「充てん材をスキ間に埋め込んだり、充てん後に表面を平らにならすために必要。
  6) 固定具 「接着剤が完全に固まるまで押さえておくために必要。
   セロハンテープ・粘着テープ・クランプ・重しなどを使うとよい。
  7) 補強用の部材および工具 「接着面を補強するのに使用する。「接着面の補強法」参照

(2) 塗り方、貼り合わせ方の基本
  1) 接着面の合わせ具合・接合の向きを確認する。
  2) 接着面全体に薄く塗る 「厚く塗ると乾きが遅くなるうえ、接着力も弱くなる。
   ※木材の木口面、コンクリートなど、接着剤をよく吸い込むものには多めに塗る。
  3) 瞬間接着剤は塗り広げない 「必ず接着面から離して一滴たらし、接着する材料で押し広げながら貼り合わせる。    ※たらしすぎると、はみ出して白く固まったり、固まる時間が遅くなるので注意。
  4) マスキングテープは、作業後すぐにはがしておく。
  5) すぐに貼ってはいけない接着剤がある 「ほとんどの接着剤はすぐに貼り合わせるが、合成ゴム系接着剤は、接着する両面に塗りそのまま乾燥、数分後に貼り合わせる。接着剤に添付の使用法を確認すること。
  6) 貼り合わせたら接着剤が完全に固まるまで手を触れない、動かさないことが大切。

7−4 接着面の補強法
(1) 接着面積を広くとることで強度を増す。 接着する面積が大きいほど外からの力には強くなる。
 1) そぎつぎ「接着面をななめに切ってつなぐ。 そぎ接ぎの図
 2) 重ねつぎ「重ねて接着する 重ね接ぎの図
 3) 片面そえ木「そえ木や板を片面につける。
 4) 両面そえ木「そえ木や板を両面につける。
添え木の図
 5) グルーガンでホットメルトを肉盛りする。 肉盛りの図
*1・2は部材が短くなるために、補修・治療では使えない。
(2) 機械的結合を併用することで強度を増す。
 1) 針金で縛る。
    0. 5mmの穴または溝を開け0.28mmのステンレス線で縛る。
    プラギアの割れは、全周に溝を掘りステンレス線で縛る。
針金で縛る図
 2) ピアノ線のダボでつなぐ。
    0. 7mmの穴を開けて、0.7mmのピアノ線を差し込む
    接合する大きさに応じて、ピアノ線の太さを選ぶ。
ピアノ線のダボでつなぐ図
 3) 穴を開けて差し込む。
    丸棒を平板上に立てる場合。
穴を開けて差し込む図
 4) チューブを被せる
    丸棒の補強、コードの補強にも有効。
チューブを被せる図

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編集 津おもちゃ診療所