おもちゃドクター入門講座 初級編
第4章 おもちゃ診療所の進め方

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4−1 開院準備

新規開院時の事前準備
(1) 協力・支援の関係を明確にしておく。ただし、営利企業の主催はない。参照3-2
(2) 事前に決めておくこと
   開院場所・開院日時・入院おもちゃの返却方法(場所・時間・連絡方法)
   参加ドクターの人数・用意する机イスの数・昼食旅費等の経費支援額
   PR内容の基本事項(おもちゃ病院の趣旨に反しないように)
   カルテの様式・診療記録の様式・その他
(3) 事前に確認しておくこと
   会場の広さ・駐車場の場所・電源の場所・電源コードの有無・診療依頼件数の予想数
   掲示板の有無・

おもちゃ診療所で準備するもの
(1) 診療工具・診断機器・診療用部品・資材
(2) カルテ・診療記録・看板
(3) 事務用品
   筆記具・ペーパーホルダー・トレー・セロハンテープ・テープカッター
   はさみ・カッター・定規・画鋲・のり・クリップ・ホッチキス・針
   No.スタンプ・スタンプ台・穴あけパンチ

会場設営の仕方
(1) 通常は、机などで仕切り内側に子どもが入らないようにする。安全対策
(2) 診察待ち・診療済みのおもちゃ置き場を決めておく。外から手が届かない場所
(3) 受付と診察・診療場所は、分けるほうがよい。
(4) 受付には、事務用品とカルテ用紙を置く。受付看板・受診案内を掲示する。

4−2 受付作業

受付作業は、その後作業に影響するので重要です。次の事項に注意してください。
(1) おもちゃ診療所案内の内容を説明し了解を得ておくこと。
  傷つく場合・有料の場合・入院の場合・責任の範囲・診療対象
(2) おもちゃ1点ごとに、カルテ1枚を使用してください。
(3) 氏名・住所・電話番号は必ず書いて頂いてください。返却時必須
(4) おもちゃの名前・症状および付属品を保護者と一緒に再度確認してください。
(5) 預かりの場合、おもちゃの名前・付属品の記入を確認して預かり証を返却してください。

4−3 診断・治療作業

原因と症状の確認
(1) 最初に問診で故障原因・内容を確認する。
  1) いつから・どうしたら・どうなったのか聞くようにする。
  2) 正常な時の状況を確認しておく。
(2) 外観チェックで破損個所の有無を確認する。
  1) 分解方法の確認(ネジ止め・勘合・接着・・)
  2) 再組立時の状態を記憶(デジカメによる記録を推奨)
(3) 電気使用のおもちゃは、電源(電池・ACアダプター)の確認からする。
  1) 電池の種類・入れ方・外観をチェック(リモコンを忘れないように)
  2) 電池劣化・電池ボックスのチェック(汚れ・腐食・変形)
  3) ACアダプターは、指定品かどうかと、出力電圧をチェックする。
(4) リモコン付きの場合は先にリモコンの良否を確認する。
  リモコンの作動が確認できたら、本体の故障を疑う。
(5) 以下は分解をして確認する。
  1) 分解しながらの目視確認
   ・部品全般/脱落・破損・変形
   ・電気配線/切れ・外れ・接点の錆・変形・基板割れ・汚れ
   ・可動部品/脱落・破損・ギヤ割れ・ごみの絡まり・
  2) 故障の頻度の多い個所から確認すると効率的である。
   ・モーター使用のおもちゃは、モーターの回転・モーター端子電圧・基板
   ・スピーカー使用で、一部のボタンで鳴らない場合は、スイッチ・接点・基板
   ・鳴らない場合は、最初にスピーカーのチェック・電圧・基板
   ・光るおもちゃで、一部のボタンで光らない場合・スイッチ・接点・基板
   ・まったく光らない場合は、光源両端の電圧・光源の断線・配線・基板

*特に症状の確認では、思い込みを排除して誤診を防がなくてはならない。

分解の基本
(1) 分解時に現状以上に傷つけないこと。
(2) 傷をつけないと分解できない場合は事前に了解を得ておくこと。
(3) 分解用工具、特にドライバーはネジの形状・大きさにあったものを使い頭に損傷をあたえないようにする。
(4) 引っ掛け用爪や隠しネジの位置を確認し無理にこじ開けないようにする。
(5) 取り外したネジは太さ・長さを確認して取り付け場所がわかるように保管する。
(6) 部品を外す前に部品どうしの位置関係を記録し、再組立が間違えなくできるようにしておく。
(7) 短い配線は、分解中に引っ張られ切れることがあるので、あらかじめ印しを付けて外しておくのがよい場合がある。延長コードの利用
(8) 分解は一度に全部せず、故障個所を推理し部分ごとに分解・チェク・組立を繰り返す。

部品の交換
(1) 同等の部品で交換するのが原則(無い場合は同等以上のものを使用
(2) ハンダ付け部品の交換は短時間で行う。
(3) 大きさが違う部品に交換する場合は、がたや干渉が無いか取りつけ状態を確認する。

接着による補修
(1) 使用材料に合った接着材を使用する。
(2) 接着面はあらかじめきれいにしておく。
(3) 固まるまで動かさない。
(4) 力のかかる場所で折れた部品の接着は、補強する。(針金・当て板

ハンダ付けによる治療
(1) ハンダ付け作業は短時間で行い、部品に熱による損傷をあたえないようにする。
(2) プリント基板では、ハンダブリッジに注意する。
(3) プリント基板上の部品を外す場合は、ハンダ吸取り器を使用するとやりやすい。

再組立時の注意
(1) 再組立前に動作確認をする。
(2) 分解時に外した配線や部品は忘れずに元どうりにする。
(3) 締め付け時に配線類を挟まないように注意する。
(4) 接着や縫製による場合は、目立たないように。
(5) 隠しネジで開いたシールの後処理をする。
(6) 外観検査をして、不安全個所がないか確認する。(針金の先・バリ・有害物質

4−4 完了テストと返却

(1) 付属品・外観に異常が無いか確認後、使用状態で最終確認をする。
(2) 故障内容・故障原因・治療内容をカルテに記入・説明する。
(3) 使用方法の間違いで故障した場合は、適正な使用方法をアドバイスする。
(4) 有償の場合は、代金をもらう。
(5) 預かり証と引き換えに返却する。

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編集 津おもちゃ診療所