おもちゃドクター入門講座 中級編
第4章  初心者のための、診療実習

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4−1 診療実習を始める前に

 初級編「第3章 おもちゃドクター・ナースの心得」をよく理解すると共に、「第4章 おもちゃ診療所の進め方」を参照して、壊れてもよいおもちゃの分解や、自作ツールの製作などにより、日々練習を重ねるようにしてください。

4−2 よくある失敗事例

 治療は、初級編「第4章 おもちゃ診療所の進め方」を参照に行いますが、初心者がおこしがちな失敗事例です。自分なりの対策を考えて実施してください。
どこも壊れていなかったのに分解してしまった。
 「原因:電池が入っていなかった。故障内容をよく確認しないで治療を始めた。思い込みによる失敗例で、少し慣れてきた頃に起こしやすい
+字ドライバーがフィットしない。
 
穴の中のタッピングを外すのに穴に入る太さの#1のドライバーを使用しているのにフィットしなかった。プラスドライバーの先端太さ比較図
 「原因:十字ドライバーの大きさ(#No.)は軸の太さではなく先端の形状で決まる。#2のタッピングであった。」
組立て時にタッピングが緩かったり、きつかったりした。
 「原因:1箇所だけ短い(細い)タッピングが使われていたのに気付かずに別の場所に使用した。」
分解途中に部品が外れ落ち、組み付け方が判らなくなった。
 「原因:ケースまたは部品で押さえられているだけの部品がある。特にバネは飛び跳ねて行方不明になるので要注意。」
リード線が切れてしまい接続先が判らなくなった。
 「原因:細いリード線が使われている場合、すぐに半田付けの個所から切れてしまう。」
勘合部の爪が折れてしまった。
 「原因:プラスチックは古くなると劣化して硬くもろくなる。」

 新たな失敗をしたときは、原因を追求し、対策を考え、記録し、その情報を公開して、情報の共有化を図ることにより全体の技術向上に役立てるようにする。

4−3 ビニール線の被覆むき実習

 ビニール線の被覆をむくには、専用工具(ワイヤーストリッパー)があるが、狭い所では使えない。ラジオペンチとニッパーを使う方法をマスターすると治療には重宝である。

ラジオペンチと斜ニッパーを使う方法
・左手でビニール線の剥がしたい位置をラジオペンチの先でしっかりはさむ。ラジオペンチと斜ニッパーを使う方法の図
・右手で斜ニッパーの刃先で線をはさみながらラジオペンチに隙間なく当てる。
・斜ニーパーに線を切断する少し手前の力を加えながら両手を近づける。(テコの原理でビニールが引っ張られて剥ける。)
・剥きづらい場合は、ニッパーやカッターで一部に切れ込みを入れておくと、集中応力が働き簡単にむく事ができる。
・ワイヤーストリッパー穴付きのニッパーを使用する場合は、心線の太さに注意する。
(ワイヤーストリッパーはこの一連の操作を片手でできるようにした専用工具である。)

カッターを使う方法

・左手でビニール線を持ち、U字形に曲げる。
・U字形の頂点にカッターを軽く当てると左右にビニールが引っ張られて切り込みが入る。
・ビニールを回転させて位置を変え同様の方法で切り込みを入れる。
・全周に切り込みが入ったらビニール被覆を手で引っ張ってはがす。
・硬い場合はラジオペンチとニッパーを使う。
・ラジオペンチとニッパーを使う場合は1箇所の切れ込みだけで十分であり、上の方法でむきにくい場合に有効である。

4−4 はんだ付け実習

 自作工具(テスト用電源スピーカーチェッカーなど)の製作を通じて行う。基本をしっかりと身に付ける。初級編「ハンダ付けの仕方」参照

4−5 テスターの使い方実習

 アナログテスターの基本的な使い方を練習する。アナログテスターの外観

取り扱い上の注意

・写真の正面を上にして水平に置いて使用する。
・使用する前に指針が左端の0位置にあるか確認する。
・テスト棒は赤色を+端子、黒色を−(COM)端子につなぐ。
・内蔵電池の良否確認(BATチェクレンジ)無い機種は抵抗レンジで針が最大まで振れるか。
・使用後はOFFレンジにする。無い機種は最大電圧測定レンジにする。
・抵抗測定時は、レンジを切りかえるたびにテスト棒をショートさせて0Ω(ゼロオーム)調整を行う。
・抵抗測定レンジに長く置かない。内蔵電池が放電する。
・抵抗測定時は、黒色テスト棒(−端子)に「プラス」が、赤色テスト棒(+端子)に「マイナス」の電圧が内蔵電池より出る。

アナログテスターの目盛の読み方
・通常、外側より抵抗・DC/AC電圧/電流・AC低電圧・デシベルの順に目盛られている。
・読み取る数値はレンジの値と目盛右端の値が合う数値を読み取る。
・抵抗値は、目盛値とレンジ倍率により読み取る。

測定実習 次のものを測定してみよう。
・電圧測定 100V交流電圧・1.5V直流電圧・9V直流電圧
・直流電流測定
・抵抗値測定(道通確認)
  抵抗測定では、レンジを変える都度、ゼロオーム調整を行う必要がある。測定前に赤と黒のテスト棒を当ててゼロオームになるか確認する習慣を付けよう。
・(乾電池良否確認)
  乾電池の良否は無負荷時の電圧だけでは判らない、負荷をかけて判定するか、電池レンジを使用しよう。(警告:電流レンジで確認するのは電池を短絡する事と同じであり、高性能電池ではテスターを壊すので絶対に行ってはならない。)
・(電解コンデンサ良否判定)
  電解コンデンサ充電時、電解コンデンサの+端子に黒色テスト棒(−端子)を、電解コンデンサの−端子に赤色テスト棒(+端子)を当てる。
・(ダイオード・トランジスタ良否判定)
  ダイオードのアノード側(トランジスタのP端子)に黒色テスト棒を、ダイオードのカソード側(トランジスタのN端子)に赤色テスト棒を当てた場合に道通があり、逆に当てた場合に無限大になれば良品と考える(不良の場合もある)。
 どちらの場合でも道通がある場合は完全に不良である。

4−6 おもちゃの治療実習

・壊しても構わない練習用のおもちゃを分解・組立てする。
・受付から診察・治療・確認・返却までを、先輩ドクターの指導の元に行う。
・治療の実績を重ね、わからない所のみ指導を受けるようにする。

 おもちゃの治療に限らず、何事も日頃の勉強と経験が必要です。基本を忘れずに日々精進すれば名ドクターになれることでしょう。

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編集 津おもちゃ診療所