十五日おちつき膳
本膳
- (1)たこ
- タコはゆでて、いぼを取り皮をむいて使う。これは腐敗を防ぐためという。
- (2)たいの焼物
- タイの料理はひれを立派に立てることが礼儀で「ひれ立ての事」という盛りつけのきまりがあった。
- (3)な(菜)汁
- 青菜を入れた、すめ味噌の汁。「みめみそ」とは味噌汁の上澄みを取った汁のこと。
- (4)なます
- コイのなます。身を細く切ってワサビ酢で和える。
- (5)香の物
- 味噌の漬物。古来より味噌のことを香といった。
- (6)ふなのすし
- フナのナレズシ、近江・美濃の特産。
- (7)御飯
二膳
- (8)うるか
- アユの内臓・卵を塩漬けにしたもの。
- (9)うちまる(宇治丸)
- ウナギを丸のまま焼き、醤油と酒を合わせたたれを付ける。醤油の使用はこの頃始まったばかりで珍しい高級調味料であった。
- (10)ほや冷汁
- ホヤは古来より珍味とされ、ナマコに似たさわやかな香りと歯触りが好まれた。
- (11)ふとに
- ナマコを干したホシコにナガイモを入れて巻き、すめ味噌で煮る。
- (12)かいあわび
- アワビは古くから貝の王者として賞美され、不老長寿の縁起ものとされた。
- (13)はむ(はも)
- ハモはこの頃から流通過程にのり、京、大阪で盛んに食べられるようになった。
- (14)こいの汁
- 「鯉にまさる魚はない」と『四條流庖丁書』(1489)にある。
三膳
- (15)やきとり
- 鳥といえばキジ。塩焼きか、クルミ酢をつけて焼いた。
- (16)つる汁・やまのいも
- ツル肉は皮、脂を除き塩漬けにしたものを、薄く切ってゆでて汁の具とする。
- (17)かざめ
- ワタリガニのこと。室町後半から安土桃山時代の武将の饗応膳に多く見られる。
- (18)にし
- ニシの身は辛みがあるので、この特徴を生かして、ケシの実や、タデ、コショウをすりこんで更に辛く、おいしくと調理法も工夫された。
- (19)すずき汁
- 室町時代以降、美味な鳥・魚を「三鳥五魚」として定め、スズキはタイ、コイとともに五魚に含まれる。
与膳
- (20)巻きするめ
- するめを巻いて、ひもで結び数日おく。さっとゆで、薄く切る。正式の儀式料理に用いる。
- (21)鴫つぼ
- ナスの真ん中をくり抜き、酒で煎ったシギ肉をつめて柿の葉で蓋をし、藁でからげる。「手の物」といわれた料理の一つ。
- (22)鮒汁
- 近江鮒として琵琶湖の特産。
- (23)しいたけ
- 煮染。味付けにはすめ味噌が使用された。
五膳
- (24)まながつお刺身
- 身を薄く切って刺身にする。
- (25)生姜酢
- マナガツオの刺身に付ける。醤油が普及する以前、刺身に添える調味料は酢であった。
- ごぼう
- 室町中期以降、生産量が増加し、消費が増えた。煮ごぼう、酢ごぼうとして食した。
- (26)鴨の汁
- カモの渡りシーズンは8月下旬から翌年2月下旬とされており、塩漬けされた肉が使用されたと思われる。
- (27)削り昆布
- コブを6〜7cm縦に切り込みを入れ、火にあぶるとコブが強くたつので、これを盛る。
御菓子
- (28)ようひもち(羊皮餅)
- わからない。現在の大福餅のような菓子ではないかと推測される。
- (29)まめあめ
- 大豆を煎りあめでからめた菓子、当時の茶会で使用。
- (30)美濃柿
- 美濃国(岐阜県)は木練柿(甘柿)の産地として有名であった。
- (31)花に昆布
- コブを柔らかく煮て花形に切ったもの。
- (32)から花
- 檜のうす板で作った実在しない花。膳を華やかにするため添えた。
※館内での展示は、五月十五日の「おちつき膳」「晩御膳」のみになります。
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