
パン・麺類・ケーキ・ビスケット・・・・等 小麦粉からつくられる食品は、私達の食生活に欠かせないものばかりです。
その小麦粉について、いろいろと勉強してみましょう。
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- INDEX
- ・小麦粉の歴史
- ・小麦粉の種類と呼び方
- ・用途別
- ・各国の小麦生産高と輸出入量
- ・日本で使われている小麦
- ・小麦の構造とグルテン
- ・小麦粉が出来るまで
- ・小麦粉の栄養成分
- ・小麦粉の分類
- ・いろいろな小麦粉の知識
- ・ちょっと詳しい小麦粉の知識
◆小麦粉の歴史
各地の古代遺跡から麦の穂や粒が発見されていることから、今から1万年以上も前から、
人類は小麦を食べていたと言われています。
- ★原始時代
- 小麦を平らな石の上に乗せ、石でたたいたり、つぶしたい、こすったりして粉にし、水で練り、
焼き石の上で焼いて食べていました。 やがて、石の臼を手で回転させて、すりつぶす方法が
考え出され、4,000年もの間石臼による製粉方法が行われてきました。
- ★動力初期
- ポンペイの遺跡から大きな粉挽き臼が発見されていることから、ローマ時代には、奴隷や家畜が
動力として使われていました。その後ギリシャ人によって発明された水平式の水車につづて、
ローマでは水車製粉、イギリス、オランダでは風車製粉が発達しました。
- ★近代初期
- 17世紀のはじめ頃までは、石臼で挽いた粉をふるいにかけ、粗い部分を分け、これを又挽いて
、再びふるいにかける「段階式製粉方式」がフランスで始められました。
ワットが蒸気機関を発明してからは、1748年イギリスで、蒸気機関を利用した大規模な製粉工場がつくられ、
製粉の動力化が一躍 大変革をもたらしました。
19世紀に入ると、現在製粉工場で使われているような「ローラーミル」が開発され、製粉工場は大きく変わってきました。
- ★日本では?
- 小麦が日本へ伝来したのは、今から2,000年以上昔の弥生時代中頃ではないかと言われています。
今日のうどん、そうめん、きしめんにあたる「めん」は7世紀頃、中国から伝わり、室町時代には、
禅僧の点心、今のおやつのようなかたちで食べられていました。
「まんじゅう」が誕生したのは、鎌倉時代。カステラ、ビスケット、ボーロはポルトガルの
宣教師達と共にキリスト教伝来と時を同じくしています。
今川焼き、たいやき、金つば等は江戸時代に入ってから登場してきました。
◆小麦の種類と呼び方
@小麦の栽培の季節によって「春小麦」と「冬小麦」
A粒の色によって「赤小麦」と「白小麦」
B粒の硬さによって「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」
C組み合わせて「硬質赤小麦」「軟質白小麦」
D用途別に「パン用」「めん用」「菓子用」
等の呼び方があります。
◆用途別
- ★硬質小麦
- たんぱく質を多く含んだ小麦で、粒が硬く「強力粉」に加工されます。粉にして水でこねたとき、
粘りと弾力が強く、パンや中華めんに向きます。
主にアメリカ産、カナダ産。
- ★中間質小麦
- たんぱく質の含有量は中ぐらい。ほどほどの硬さで「中力粉」に加工されます。粉にして
水でこねた時ノビがよく、乾めん、ゆでめんに向きます。
主にオーストラリヤ産、国内産。
- ★軟質小麦
- たんぱく質の含有量が少なく、粒は軟らかく「薄力粉」に加工されます。粉にして水でこねたとき
適度にやわらかく、ケーキ、ビスケット、天ぷらに向きます。
主にアメリカ産。
- ★デュラム小麦
- 硬質小麦の一種で、マカロニ、スパゲティ専用の小麦です。
主にアメリカ産、カナダ産。
◆各国の小麦生産高と輸出入量
(単位:百万トン)
国 名 | 生産高 | 消費量 | 輸出量 | 輸入量 |
中 国 | 100.5 | 100.9 | - | 6.8 |
旧 ソ連 | 90.2 | 101.9 | - | 18.0 |
(内)ロシア | 46.2 | 58.1 | - | 11.1 |
EC12ケ国 | 84.9 | 61.7 | 20.9 | - |
アメリカ | 66.9 | 30.4 | 37.0 | - |
イ ン ド | 55.1 | - | - | 2.9 |
カ ナ ダ | 27.8 | 7.2 | 18.5 | - |
オーストラリア | 16.2 | 4.2 | 9.2 | - |
アルゼンチン | 9.7 | 4.5 | 7.1 | - |
エジプト | 4.8 | - | - | 6.0 |
日 本 | 0.6 | 6.3 | - | 5.7 |
(IWC発表)
◆日本で使われている小麦
1年間の消費量 | 630万トン |
国内産の小麦 | 60万トン |
輸入 |
アメリカ | 343万トン |
カナダ | 155万トン |
オーストラリア | 100万トン |
★我が国の国民1人当たりの消費量は年間約32Kgです。
◆小麦の構造とグルテン
- ★胚乳
- 小麦粒の約83%を占め、糖質、たんぱく質等が主成分ですが、
粒の中心部と周辺部では各成分の含有量に差があります。
- ★表皮
- 小麦粒の約15%を占め、製粉工場のなかで胚乳と分けられ、
ふすまとなって家畜の飼料に使われます。
- ★胚芽
- 小麦粒の約2%しか占めていませんが、脂質、たんぱく質、ミネラル、
ビタミン等いろいろな栄養素がたくさん含まれています。
製粉工場で分離され、健康食品等に利用されます。
- ★グルテン
- 小麦のたんぱく質は「グルテン」と呼ばれます。小麦粉に水を加えてこねると、
小麦粉に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という2つのたんぱく質から
小麦粉特有の弾力性と粘着性をもったグルテンがつくられます。
パンがふっくらとふくらんだり、うどんや中華めんのシコシコした歯ごたえは、
グルテンの働きによるものです。
米やとうもろこし等の穀物の粉は、グルテンがないので、小麦粉のような
幅広い調理、加工には及びません。
◆小麦粉ができるまで
小麦の荷受(輸入) ⇒サイロ ⇒原料タンク ⇒精選・調質(原料精選機=小麦に混ざっている雑物を取り除く) ⇒
調質タンク(小麦に少量の水を加えて粉砕しやすくする) ⇒挽砕(ロール機=小麦を粉砕し、ふるいにかけ、さらに
別のロールにかけられる) ⇒ふるい分け・仕上げ(ふるい機=粉砕した小麦を粉とふすまにふるいわける) ⇒
ピュリファイアー(粉砕した小麦の胚乳部を振動ふるいと風力で純化する) ⇒粉サイロ(製粉された粉を貯蔵する) ⇒
再ふるい機 ⇒包装(業務用=大袋包装機及び家庭用=小袋包装機) ⇒金属検出機 ⇒検量機(内容を検査する) ⇒出荷
◆小麦粉の栄養成分
(可食分100g当たり)
成 分 | 強力粉 | 中力粉 | 薄力粉 |
エネルギー |
366Kcal | 368Kcal | 368Kcal |
1,531kj | 1,540kj | 1,540kj |
水 分 | 14.5g | 14.0g | 14.0g |
たんぱく質 | 11.7g | 9.0g | 8.0g |
脂 質 | 1.8g | 1.8g | 1.7g |
炭水化物 | 71.6g | 74.8g | 75.9g |
(植物繊維) | (2.7g) | (2.8g) | (2.5g) |
灰 分 | 0.4g | 0.4g | 0.4g |
無機質
| カルシュウム | 20mg | 20mg | 23mg |
リ ン | 75mg | 75mg | 70mg |
鉄 | 1.0mg | 0.6mg | 0.6mg |
ナトリウム | 2.0mg | 2.0mg | 2.0mg |
カリウム | 80mg | 100mg | 120mg |
マグネシュウム | 23mg | 17mg | 12mg |
亜 鉛 | 0.81mg | 0.33mg | 0.28mg |
銅 | 0.15mg | 0.10mg | 0.09mg |
ビタミン
| B1 | 0.10mg | 0.12mg | 0.13mg |
B2 | 0.05mg | 0.04mg | 0.04mg |
ナイアシン | 0.9mg | 0.7mg | 0.7mg |
(注)植物繊維は炭水化物の内数です。
★エネルギー源の炭水化物(澱粉)が主で、血や筋肉をつくるたんぱく質も含まれていますが、
必須アミノ酸のひとつ「リジン」が不足しているので、肉類や卵、乳製品といっしょに食べる
ことによって、バランスよく栄養を取ることが出来ます。
◆小麦粉の分類
分 類 | 強力粉 | 中力粉 | 薄力粉 |
グルテンの量 | 多 い | 中 間 | 少ない |
グルテンの性質 | 強 い | 中 間 | 弱 い |
粒 度 | 粗 い | 中 間 | 細 い |
小麦の種類 | 硬 質 | 中間質 | 軟 質 |
用 途 | パン・餃子の皮 中華めん・ピザ | うどん・きしめん そうめん | ケーキ・菓子 天ぷら |
◆いろいろな小麦粉の知識
- ★上手な買い方
- 上記の分類の用途別を参考に、強力粉、中力粉、薄力粉の種類を確かめて、必要な分だけ
買って、開封したらできるだけ早く使い切ってしまいましょう。そうすると虫やカビの
害からまぬかれます。
- ★上手な保存法
- ☆ニオイが嫌い!
- 小麦粉は、ニオイがつきやすい性質を持っていますので、洗剤、灯油、化粧品等のニオイ
の強いものといっしょに保存するのは、さけましょう。
- ☆湿気もニガ手
- 湿気は虫やカビの原因になります。涼しい乾燥した場所に保存しましょう。
- ☆虫の侵入に注意!
- 使い残した小麦粉は、缶や瓶等に移し替え、虫や異物が入らないように密封しましょう。
- ★上手な使い方
- ☆よくふってから
- 小麦粉は、よくふってから使いましょう。ベーキングパウダーを使う時は、粉といっしょに
ふるうと均一に混ざります。
- ☆使った粉はもとの袋にもどさない
- 小麦粉は、必要な量だけ袋から取り出し、天ぷらやフライなどで肉や魚にふれた小麦粉は、
カビやかたまりの原因になりますので、もとの袋にはもどさないようにしましょう。
- ★使い方のタブー
- ドーナツ、アメリカンドッグ、スペイン風揚げ菓子などの生地(きじ)を油で揚げるときは、生地中の水分や空気
が急激に加熱膨張して、油が飛び散り、やけどをする危険がありますので、下記の注意を守って下さい。
- ☆ドーナツ、アメリカンドッグなど、小麦粉100gに水80cc以下で練った生地を揚げる場合は、
砂糖10g以上とベーキングパウダー3g以上の両方を必ず入れて下さい。
- ☆スペイン風揚げ菓子など,小麦粉を熱湯で練った生地を揚げる場合は、必ず星型の口金で絞り出して
表面積を大きくしたり、生地の表面を荒らして下さい。
◆ちょっと詳しい小麦粉の知識
- ★国内産小麦
- 昭和27年に食糧管理法が改正され、従来の供給配給制度が廃止されて、自由な民間流通を前提として、小麦の需給及び価格の
調整をはかるため、生産者の申し込みに応じて政府が無制限買入れを行うという、間接統制制度に変わりました。
しかし、昭和30年以降は、政府が生産者から買う価格よりも、製粉工場へ売る価格の方が安いという、いわゆる価格の
”逆ざや”が生じ、生産者は自由市場で売るよりも政府へ売った方が有利なために、国内産小麦のほとんどが政府に
売り渡され、全量政府管理に近い実態になっています。
- ★外国産小麦
- 昭和27年以降も国内の需給や価格の安定をはかるため、政府が輸入しています。ただし、
実際の輸入業務は政府指定の輸入業者が代行しており、輸入業者は、アメリカ、カナダ、
オーストラリアの各国から、政府(食糧庁)が注文した数量と品質の小麦をしてきます。
それぞれの国から船積みされる時、その国の政府の検査官による品質検査が行われますが、
日本の港に到着した時にも、輸入国としての検査が行われます。検査に合格すると
港のサイロや倉庫に保管されますが、最近ではほとんどがばら貯蔵となっています。
- ★製粉工場への売却
- 政府は、買い入れた国内産及び外国産の小麦を、需要に見合って、定められた価格で、
製粉工場へ売り渡しています。
- ★小麦粉のJAS(日本農林規格)は?
- 小麦粉は次のような理由でJASを設定することは、むずかしいので設定されていません。
- @原料の小麦が農産物のため、同じ銘柄の小麦でも産地の気象条件、土壌、収穫年度などによって
、品質に微妙な差がある。
- A同じ分析値のもの、たとえば、同じ灰分値・たんぱく質量の小麦粉で作ったパンや麺でも
品質に差があり、分析値よりも加工適正の方が重視される。
- B小麦粉の用途は幅広く、要求される品質も広範囲で、規格化がむずかしい。
