第6章〜大いなる革新 



 
 

 《町役場の嘆き》

   『ふるさと返礼品で黒大豆が不足している。』 と担当課に聞く。
   
   小口の耕作者が多く、年末寒い時期の作業と天候による乾燥作業に難渋し、緻密な
   
   手選別の困難さに高齢化も加わって年々減少していると。
   
   さらに、成長途中で枝豆収穫をして販売する耕作者が多いという。
   
   『樂農庵も耕作を検討してくれないか?』
   
   この一言は ・・・・・瑞穂大納言小豆を始めた経緯と様相が似てきた・・・・
      
 
《現状設備再考》

   特産物の黒大豆栽培事情に男気を擽られて、俺は当社の設備を見直すことにした。
   
 
乾 燥

   50mのビニールハウス2棟を遊ばせているのに気付いた。
   
   大型扇風機10器も備えている・・・  このハウス利用で乾燥させれば・・・
   
   稲木仕様にして3段・2列×2棟で3,200本20a分が可能か。
   
   さらに小豆用テント式乾燥機2基も小豆用期間は制限するが1,600本10a分が可能か。
   
   水分比18%で刈取って2日〜5日で15%に落して30a分が乾燥可と判断。
   
   播種〜管理工程の機械は小豆用と併用出来る。
   
   刈取りは、汎用コンバインでは茎汁が付着するので、手刈り〜脱粒機か。
   
   刈取り員数は、手刈り〜搬送〜投入で 5a/800本/人 と試算。
   
   刈取り時期は、小豆の前半が重なるので人員配置と臨時雇用の手配を要す。
   
 
選 別
   
   風力選別機 粒選別機は併用可。 色彩選別機は部分加工を要するが特注可能か?。
   
   問題は手選別の人員であり、手選別時間と額が成功の可否を握るか?だな。
   
 
《義理と事業の狭間》  
   
   黒大豆から産まれた京白丹波を世に出すのは未だ果たせてないが、令和4年産は
   
   在庫量極少まで来た。そして2月末にはR 5年産の大口朗報の期待が持てるかも?
   
   令和 5年から白小豆栽培も60aに増作するが大丈夫なのか?
   
   黒大豆の既栽培者数人から技術や経験談を聴取して、10a当りの収支設計書と工程表
   
   を作成して課題が浮かび上がッて来た。
   
            稲木材料 (単管仕様)         750,000ー
   
            脱粒機 (ビーンズスレッシャー)  1,350,000ー
   
     乾燥設備は一度に30a分では年末出荷は不安定故に新設として
   
            乾燥庫 (20a用)           2,750,000ー
   
      乾燥庫を収めるには倉庫の新築が必要として
   
            倉庫建築  (農機収納兼用)        7,500,000ー

                                合計 12,350,000ーの投資となるか。
   
   この数字は非常に厳しい。災害復旧で資金面にも大なる影響が出ているのに・・・
   
   春までに資金面の見通しを立てることにして、耕作面積を検討し収支設計書から
   
   面積単位と5ヵ年の資金繰りシュミレーションを繰り返して、おおよその挑戦面積が
   
   診得て来た。
   
   陽当たり・土質・潅水等を鑑みながら持ち圃場名簿との睨めっこすること3日。
   
   黒大豆耕作面積を2.38haと決定しようと・・・。
   
   しかし問題があった。
   
   瑞穂大納言小豆の耕作面積を2ha減積しなければ確保出来ない。
   
   俺が惚れに惚れ抜いている瑞穂大納言を減積することはしたく無い。
   
   瑞穂大納言を減積しては、京都府や町 さらには応援してくれている村人への義理が
   
   立たない。
   
   義理を重んじるのは俺の『ステータス』であり、俺の『美学』 だ。
  
 
《決 断》

   義理と事業の狭間で悩んでいる頃、福知山市で3haの耕作誘いが京都府より舞い込ん
   
   できた。
   
   俺の人生、人に恵まれる幸運はいまだ健在也って事だろうか。
   
   雪解けを待って即座に下見に行く。所要時間は18分。
   
   獣害柵は設置済、陽当たりは申し分なし。水路漏れが激しく副水路作りの土木作業には
   
   1か月程度は掛かろうが、大いに気に入る下見であった。
   
   これで瑞穂大納言の13ha継続と2毛作の小麦7ha、白小豆0.6ha、京白丹波0.6haに
   
   加えて2,3haの黒大豆を確保出来、減積課題も解消することに相成りし。
   
   義理も守り、実利に惑わされず、農業町政にも貢献をして・・・『余は満足じゃ』。
   
   なれど!!
   
   現状は計画が成り立っただけの事であり、肝心の実施に於ける来るべき困難を如何に
   
   立ち向かい対処して行くかを認識して、褌をきりりと絞めて掛かからねばならない。
   
   
これは樂農庵の挑戦であり、偉大なる未知普請、強いては大いなる革新である。
   
   イノベーションに於ける投資資金と求人の解決を探り苦悩する樂農庵が診える。
   
             
 なにせうぞ   
             くすんで一期は夢よ   
                     ただ狂へ